りょうすけ

ジーザス・クライスト=スーパースターのりょうすけのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

「ジーザス・クライスト=スーパースター」

このバージョンでのジーザスは聖人よりも人間としての印象の方が強い。ガタイも良く軍人や革命家の様な風貌だが、熱心党のシモンが民衆に戦うことを促すシーンでは、苦言を呈する様な表情をしたりピラトの質問に対しては冷静に答えたりする一面もある。

しかしながら「最後の晩餐」や「磔刑」のシーンでは声を荒げるなどの人間らしい一面もある。私のイメージと完全にかけ離れたジーザスなので、何を考えているのが理解しにくい。一つ言えるのは「聖人」などではなく、「小さく普通の人間」であるということだけだ。

歌は圧倒的に上手い。難曲である「ゲッセマネの園」を軽々と歌い切る歌唱力は並大抵のものではない。繊細でありながらも力強い歌声はイメージ通りのジーザスだった。

また本作の主人公と言っても過言ではないユダを演じたジェローム・プラドンもまた素晴らしい。彼の歌唱力は圧倒的とまでは言わないが、味がある。ジーザスを愛していながらも、裏切る運命にあるユダの荒削りさが感じられる歌い方がまさにロック。2012年版でユダを演じたティム・ミンチンや私が劇団四季で観た芝清道、佐久間仁、吉岡慈夢の3人よりもその点は印象的。

ユダの役を演じるにあたって一番重要なのが、ユダは完璧かつ器用な人間ではないことだと思う。ジェロームの演じるユダは、決して出来た人間ではない。この役を演じるに当たっては最高の人材だと思う。

またマグダラのマリアが娼婦の様な服装なことや祈りの場が歓楽街の様な妖艶さとミステリアスな雰囲気を感じる場所として描かれていたこと、低音ボイスがカッコ良すぎるカヤパ、イメージ通りの高音ボイスのアンナス、ワイルドすぎるピラトなど、好きなポイントが多すぎる。

この演目自体が大好きだが、出演者や演出によって全く異なる顔を見せるのが「JCS」の一つの魅力でもある。個人的には劇団四季のジャポネスク・バージョンを愛してやまないが、これからも色んな演出の「JCS」を観ていきたい。
りょうすけ

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