りっく

銀魂のりっくのレビュー・感想・評価

銀魂(2017年製作の映画)
3.7
物語の本筋を担うはずの安田顕、堂本剛、柳楽優弥、吉沢亮といった歴史上の人物になぞらえて演じているキャラクターの存在感が薄くなるほど、福田雄一作品の飛び道具的存在である佐藤二朗とムロツヨシの瞬間最大風速の出し様に笑わされ、もはや本筋なんてどうでもいいと思わせられてしまう歪な快作であり、マンガ原作モノの映画化としてはある意味理想的な作りだと思う。

ふざける時はふざけ、ちゃんとやる時はちゃんとやるメリハリの効く小栗旬。軽いノリとチキンっぷりが最高な菅田将暉。そしてムチムチの身体でゲロを吐くわ白目を剥くわで体を張る橋本環奈の幅広さとこの世界観の理解力が楽しく、嬉々として演じる姿が頼もしい。

冒頭から小栗旬の登場をカラオケのPV風にしてカウントダウンTV形式で茶化すなど、大真面目に原作世界を忠実に実写化するのではなく、メタ的な視点を絶妙に挟み込みツッコミながら進んで行く視点が、観客の視点とリンクし、そしてこの荒唐無稽な世界観のナビゲーターとして機能していてとても見やすい。

福田雄一もビッグバジェットながらも、テレビ東京の深夜ドラマのようなノリを畳み掛け物語の推進力とするなど自分の持ち味を存分に発揮し、無理に風呂敷を広げ過ぎなかった所が勝因。攘夷やら倒幕やら、Dr.オクトパスを彷彿とさせる盲目の男を演じる新井浩文やら、吉田松陰の塾生である小栗旬・堂本剛・岡田将生が師匠が逮捕され散り散りになった過去や、人斬りの最高の刀を作ることに人骨注いできた安田顕の葛藤などもはやどうでもよい。

印象に残るのは冒頭のバカバカしいカブト虫探しであり、あと3年後の橋本環奈が楽しみだと仕切りに呟くロリコンの佐藤二朗であり、新たなオレオレ詐欺でひとりで敵陣に乗り込んでしまう菅田将暉であり、橋本環奈と共にラーメンを大食いするもえあずや赤坂女王であり、ルフィやバカボンやラピュタなどまたまた業界のギリギリを攻める福田雄一の愛溢れる小ネタの数々なのだ。
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