はやひ

シュガー・ラッシュ:オンラインのはやひのレビュー・感想・評価

4.3
とんでもない傑作。世界中の親を真正面から刺しにくる映画。
インターネットの世界の描写やディズニーお得意の身内ネタは予想してたが、ストーリーの切れ味に驚いた。
対象年齢は30代後半〜60代ではないか。
逆に10代〜30代の、「この問題」にぶち当たった経験がない人にはあまりピンとこないと思う。

アメリカの社会学者スーザンフォワードが「毒になる親」を刊行したのが2001年。以来親子関係研究は大きな動きを見せている。(日本でもここ10年ほどで問題の取り扱われ方は違ってきている。)
従来は「親から離れられない子」を問題視する向きが強かった。(未婚で親元同居する子供を「パラサイトシングル」と称し批判するなど)
しかし近年では、この問題は心理学・経済学・教育学・法学・地政学など学問横断的に扱われており、世代間格差や親の対人関係構築、親子の共依存心理、ジェンダーによる差異など多角的に注目されるようになった。
親と子の関係は重層的で広いトピックなのである。

この映画はそうした最新の親子問題トピックを敏感にキャッチした内容になっている。(一応形としては友達だが、全てのセリフや行動が彼らが擬似的親子関係(保護-被保護関係)にあることを示している。)それだけでなくディズニーがそれを用意することで、子どもと一緒に「安全安心な映画」を観に来た親にとっては自分の身を振り返らせる仕掛けになっている。(意地の悪いトラップにも見える)

しかしそれこそが今回ディズニーが選択したインパクト創出の鍵だった。社会問題の「病床」側に直接メッセージを伝え、その人の価値観を変えに行くというチャレンジ。明らかに子どもの成長と自由を認められない親に対するダメ出しが込められている。生活圏を広げ価値観と習慣を更新していく子ども、それに対する親の焦りと心配の言葉、子の反発、増幅する親の保護欲とアイデンティティ…全ての描写にリアリティというか生々しさがあり、示唆的というよりは攻撃的ですらある。

とはいえ、この映画はただ過保護な親を批判するだけには終わらない。そうした親の感情にも寄り添いつつ、批判ではなく共感と提案を示している。(とある人物のセリフ一言でその共感をシンプルに総括しているのが凄い。)

「問題作」と言われる社会のある人を批判する作品は世の中に多々あるが、その多くが加害者と被害者を二元的に捉えた上でどぎつい表現で加害者の異常性を強調する又は被害者への共感を煽る方法を取る。

対してこの映画は観る人への共感と提案により社会を変えようという強い意志のもとに作られている。対立ではなく痛みを伴ってもなお調和を目指そうというメッセージがある。(「メリダ」や「ズートピア」に比べてもピクサーのこの傾向は高まっているように感じる)

ディズニーには人と世界を変えようという覚悟がはっきりとある。
この映画を観る人が1人でも増えるといいなと感じる素晴らしい作品だった。




トロンが出ててテンションぶち上がった!!!!
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