はやひ

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのはやひのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

最高。

細かいことはいいんだよ!B級ホラーなんだから!

オズワルドが覇権を握っていて泣いた



【「サムライミ」とは何か】

実験的作品を次々に放つMCUの中でも特に異彩を放つ本作品。

監督サムライミの趣味が全開であることが話題だが、それは
「ホラー映画の大御所サムライミだから、
ホラー演出が際立ってた!」
と言う程度ではなく、
今作はMCUが何度もトライしている「映画ジャンルのインカージョン」の中でも特に大爆発を引き起こす類のもの。

何がそんなに実験的かというと、、
まずはその理解のために、「サムライミ」とは何かを正確に解釈しておくと良い。

一言で言うと「サムライミ」とは単なる「ホラー界の大御所」ではなく、「80年代B級ホラーの象徴」である。

特に重要なのはこの映画がB級映画として(意識的に)作られていること。
その特徴は多々あるが、
①印象的でファストフード的なケレン味あふれるシーン作りを最優先させる(ホラー演出に代表される)
②シーン展開や編集点のテンポを速くする
③シナリオの整合性を劣後させる
④キャラクターの細かい感情描写を割愛する(観客に委ねる)
⑤キャラクターを大事にしない(簡単に死なせたり酷い目に遭わせたり悪役にしたり)
⑥シリアスシーンの中にコメディ描写を混ぜる(馬鹿馬鹿しさを随所に入れる)
といったところ。

本作は、挙げればキリがないがこれらの要素がフンダンに盛り込まれている。。

そしてこれらは、今までMCUが意識的に排除してきた特徴だろう。

バトルアクションの要素はそのままに、
整合性や感情描写をしっかり行い(特にウィンターソルジャー以降)、
シリアスとコメディを描き分け笑って良いですよポイントを明確にし(ファブローもルッソ兄弟もワイティティなどもこれが特に上手い)、
誰もがハマれるシリーズとして成功を収めてきた。

要は、これまでMCUは、「アイアンマン」以前のアメコミ映画/コミックが持っていたB級イメージを排除することで、一般向けに門戸を開きファンを獲得してきた。

今作はその流れを一転させ、「ど真ん中B級のMCU映画」を作ったのだから、そりゃあその衝撃たるや。
賛否両論の声があるのも当然だろう。

そういう意味ではB級映画に慣れていない人たち(MCUファン含む)が
「ストーリー展開が雑」「不要なシーンが多い」「何も残らない」「キャラを大事にしろ」「彼女は全てのダークホールドを破壊した←突然なんやねん」という感想を持つのは理解できる…。

また、それをMCUでやるのはどうなんだ!?という感想も理解できる。当然MCU側も確信犯で、相当に挑戦的な試みであることは間違いない。

逆にB級展開に慣れている人はワンダビジョンやwhat if?やsky scrappersを観てなくても楽しめてしまう。

「監督自身がやりたいことをやり切った」ということもできるが、そもそもはこれがB級映画に求められていることだし、観客が観たいものと相反するわけではない。

良さが分からなかった!という人も、これを機にB級映画の世界観に浸ってみるといいかも。
まずはロッキーホラーショーあたりからお勧めします()


【サムライミ要素以外】

とはいえ、ストレンジの続編としてもかなり満足度は高い。
特にクリスティーンとの関係をしっかり収束させたのはポイント高い。
全宇宙で〜は反則。
what ifで観た通りクソ重い愛情がありながら全宇宙で脈がないことを知り、
それでも愛してると伝えるところ。
監督の演出が薄味だからこそ、2人の演技力(と我々の想像力)が活かされる素晴らしいシーン。

翻って今後のシリーズについて想いを馳せると
今作で「各ユニバースでの各個体が別々の個人であること」を印象付けたことで
MCUはかなり茨の道を行ったなという感じ。
つまり、「彼女は他のユニバースで幸せになってくれ!」が逆に使えなくなったというか、、、
616のワンダは616のワンダでしかないもんなぁ、という感じ。

616キャロルキャプマならワンダと互角なのかな。
やはり616キャロルキャプマは最高
はやひ

はやひ