海苔

シークレット・オブ・モンスターの海苔のレビュー・感想・評価

3.3
はっきり言って、なにがなにやらよく分からないままに終わってしまった。予告などから背筋の凍るような恐ろしい心理スリラーを期待していただけに、音楽は非常に重厚で不気味だったものの、肩透かしを食らったような感覚だった。結局なにが彼を独裁者たらしめたのかも釈然としない。

しかし、この映画を見て感じる飛躍や不可解さというのは私たちが実際の独裁者の幼少期に人格形成の過程を見ようとするときに感じるものと同じものだ、という監督のインタビューを見て、とりあえずの納得を得た。いくら類を見ない独裁者とはいえ、本来人間の人格形成というのはそんな単純に語れるものではないのだろう。どれが決定的な要因であったかは不明なまま、様々な必然や偶然が複雑に作用しあいながら一人の人間が形作られていく。そしてその過程の大半は、傍から見ればドラマチックとはかけ離れた日常の中で、個人の内面で静かに着実に進行していく。その意味で、この作品は真理を忠実に捉えたものになっていると言えるのだろう。一見ではわからなくとも、この作品を何度も見ることで、微妙かつ繊細に独裁者の人格をつくっていった少年時代をより深く考察できるようになるのかもしれない。換言すれば、独裁者の形成過程を考察するにあたって、何度も繰り返し見直す価値が、現実に忠実でゆえにわかりづらい本作品にはおそらくある。
海苔

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