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サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~のQIのレビュー・感想・評価

4.2
“アナログとデジタル”

アマプラ入会を考えたほど観たかった作品が劇場公開されると聞き、勇んで劇場ヘ。

それも特別な音響システムを備えた劇場での先行上映ということで、HTC渋谷のodessaでの鑑賞。

結果、“ノイズ”と“静寂(無音)”が体感できる環境が、この作品の本質を理解することにつながることを実感しました。

ある日突然聴力に異常をきたしたバントドラマーのルーベン。

その戸惑いと恐怖は見ているのが辛くなるほどリアルに伝わります。

社会にはそれを支援するコミュニティやシステムがあるにも関わらず、彼はそれを素直に受け入れることができず、ある決断をするのですが…

ルーベンを演じるリズ・アーメッドが、オスカー主演男優賞ノミネートも納得の抜群の演技と存在感。

さらに彼のパートナー、リーを演じるオリビア・クックは『ライフ・イットセルフ』でのパンクディランに引き続き、ヘビーな歌声を披露しています。

そしてラストシーンの余韻は席を立つのも躊躇するほどハンパない!

この作品を観て、人間の耳は聞いた音にその時の心情や周りの環境という情報を加え処理し認識できる、究極のアナログ器官だということをあらためて感じました。

それは耳だけではなく、人間の行動を司るすべての感覚に当てはまることかもしれません。

デジタル化が急速に進んでいる現代。

膨大なデジタル情報(画一的な情報)に振り回されることなく、人間はたとえそれが間違っていたとしても、過去の経験や知識を加えて、アナログ的に処理し行動するのが自然な姿のような気がします。

ラストシーンのルーベンもそれに気がついたような、清々しい表情のようにも見えました。

そこに必要なのは“AI”ではなく“愛”だということを。

p.s.
これからこの作品を配信やメディアでご覧になる方は、周りの音が一切入らないよう、ヘッドホンでの視聴をオススメします。
そのほうが、本作をリアルに体感することができるハズ。
注)但し適度な音量で。大音量は必要ありません
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