すずや

荒野にてのすずやのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
4.2
アンドリュー・ヘイ監督の『ウィークエンド』の公開が近づいているということで、作風を知りたくて観た。ずっとミニシアターの評判も良かったし気になっていたが、本当に優しさを感じずにいられない作風だった。ヘイ監督の世界は、ポスターにも表れているように、暖かい色をしている。

母は家出し、父もまともに自分の面倒を見ていない。そんな愛とは縁遠い環境で育ったチャーリーが、愛を知り、喪失を知り、裏切りを知り、そして居場所を見つけるまでの物語だった。今まで”孤独”の中で生きてきた少年が、まさしく”孤独”そのものである荒野で自分に向き合い、旅するその様が清々しさすら感じさせる。

ヘイ監督の作品は初めてなのでわからないことも多いのだが、私の印象としては「会話で見せる」ことがうまい監督なのではないか、と感じた。俳優が背中で、表情で語ることと、言葉にして語ることのバランスが実に絶妙だった。主演のチャーリー・プラマーの目つきや振舞いには心を掴まれた。しかしそれ以上に、言葉にして表していることと言外に伝えていることのバランスが本当に上手くて、監督の世界に魅了されて仕方がなかった。

やわらかい色彩で彩られた世界は、荒涼としていて本当に美しかった。
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