冬出カエル

あゝ、荒野 前篇の冬出カエルのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 前篇(2017年製作の映画)
4.5
「ちゃんとしたい、愛とか」

イメージとして勝手に平成初期か昭和の話だと思っていたので、未来の話で驚きました。男同士の血と汗!って感じかと思いきや生と性の色濃い話で、どの人間も屈託がないのになにかを抱えていて、それがどうしようもなく人間臭かった。あと笑いどころも案外多く、素敵な映画でした。許すとか許さないとかではなくてそれはもう始まってしまったから、だれかがどうにかして終わらせないといけないことなのかもしれない。新宿歌舞伎町に跨る街で皆生きていて、不思議と縁が集まっていく。ぱっと見キレイなことを言っているキャラクターの気持ち悪さが目立ちました(良い意味で)。生きてきて思う違和感をきっちり描いていると思います。
女性も案外多く登場するのですが、母性とセクシャリティ両面、たぶん絶望で救いだったりするのかなと思いました。女性像がしっかりしていて、港のようにも描かれている。
まだばらまかれたままの縁が、最後どのような形で終結するのか後編も楽しみにしています。役者さんたちが何処か素で役を生きて笑っているところもあり、良かったです。小説が原作だからか、印象的なセリフも多かった。ちゃんとしたものに捕まっていないと転がりそうなところはみんなだれしも生きていたらあるような気がします。
生きていてたまたま巡り合った二人のボクサーが、なにもないだだっ広い荒野みたいな果てでなにを見つけるのか、楽しみにしています。
ユースケサンタマリアさんの柔らかな救いがよかったなあ。いわずもがな、肉体も精神も作り上げた新次とバリカンには大きな拍手を。其処に二人は生きていた。

生きなきゃな、と思いました。
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