あらた

あゝ、荒野 前篇のあらたのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 前篇(2017年製作の映画)
3.8
CSでやっていた完全版を鑑賞。後編まで含めての感想です。
寺山修司、ヤンイクチュン、菅田将暉という座組は最&高!
特にヤンイクチュンの演技力に脱帽。この人の演技は「演じる」と言うよりも「なる」という表現がふさわしい。本作では、吃音持ちで気の弱い人にしか見えず、何度見ても『息もできない』のチンピラ、サンフンと同じ人とは信じられなかった。
基本的に主要キャストはみんな良い演技をしていたけど、ヤンイクチュンはその中でも圧倒的だった。

一方で、現代的な社会問題や監督の政治意識が前面化してくると、途端に映画が陳腐なディストピア物っぽくなって不満。
特に自殺防止サークルのくだり。あれ、心の底からいらない。
父親同士の因縁や徴兵制の描写、自殺防止サークルに寄り道せず、もっとシンプルに新次と健二に焦点を絞ってほしかった。
例えば、松本大洋『ZERO』や、新井英樹の『SUGAR』(と続編の『RIN』)のように、「リングの上で殴り合うことでしか他者と繋がれないことの悲哀」に絞ったら傑作になりえたように思う。

最後に言っても仕方ないツッコミだが、審判は何してんだ、と。
流血で止めないのはまだギリ許せる嘘だとしても、70数発打たれ続けても止めないのは無理がありすぎる。最後のはもうボクシングじゃなくて審判ぐるみの殺人だよ、これ。

P.S.Brahmanの主題歌はとても良かった。
あらた

あらた