cerohann

アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男のcerohannのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます


原題が"Der Staat gegen Fritz Bauer"(国 VS フリッツ・バウアー)であるように、
これはアイヒマンを追跡することがメインテーマというわけではなさそうだった。
バウアーという人間を描き出すことを通して、個人と国家の関係性について思い巡らせるような作品だと思った。
国家反逆罪というワードや、
ゲーテやシラーについて、彼らの業績は彼らのものであって彼らを我々ドイツ人の誇りにすることはできないというセリフが、ナショナリズムへの問い直しを促しているように思えた。
(でも英語タイトルは"The People Vs. Fritz Bauer"で、人民と対立することになってて謎……)

フリッツ・バウアーとカール・アンガーマン(架空の人物らしい)の二人の男の物語が、バウアーが175条(同性愛を裁く法律)はナチの世界観とは関係ないと言ったりする同性愛の問題を絡めて展開していって、そこにも見所があった。

主人公がハードボイルドな雰囲気のあるかっこいいおじさんで、
その一方で、お茶目と言っていいのか、抜けてると言っていいのか分からないけど、自分が出した命令を忘れて、部下にどうしてそんなことしたんだと聞いたり、ホテルでありがとうと言っても去らないポーターにどうもありがとうと言っておじぎしたりする一面があって、そのキャラクター性が好きだったし、そういう描写を節々に入れる演出も好きだった。(靴下とか目隠しとか)

戦後のアデナウアー首相の時代にあって、
ナチでありながらドイツの要職についていたという話、捜査機関はナチの残党だらけ手出しがなかなかできない状況だったこと、さらに米独ともにアイヒマン裁判を望まないというセリフが驚きだった。
戦後ドイツについてはヨーロッパ連合のことで勉強したけど、戦後ドイツのナチスの展開についてはあまり知らないことに気づいて、勉強したいなと思った。

字幕版
(やっぱドイツ語かっこいいんだよなぁ……)
cerohann

cerohann