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屍憶 SHIOKUの3110136のネタバレレビュー・内容・結末

屍憶 SHIOKU(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

《事実に基づく話》だそうなのですが、そうとは思えないほど良くできたストーリーでした。だからこそ映画になっているのでしょうけどね。事実は小説より奇なり。

「台湾の映画なのかな」と思いながら鑑賞しつつ「でもなんかJホラーっぽさもあるよな」と思っていたら《日本×台湾合作》だそうです。いい感じに怖いです。派手すぎない。

Filmarksだとマーク数が少ないけど良作だと思います。





この映画はオチがある映画です。ですので、もし観ようと思っている方は、一旦引き返していただき、鑑賞後ぜひまた来てください。オチがある映画は、オチを知らずに観るのが良いと思っております。
※いつも書いてて思うのですが「オチがあるので引き返して」と書いた時点で、もう駄目ですよね^^;オチがあると分かってしまいますものね。これを見た時点で「オチがあるのか」と身構えて鑑賞することになってしまいますし。上手い伝え方はないものか…。



では、以下感想です。
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●ストーリーのオチ具合が心地よい
オチがあるとは全く思わずに観たので、最後のオチにびっくり。「そうだったのか!」と驚きました。しかも、伏線の張り方などが私には丁度良く「あ~そういえばそうだわ、だからこうだったのね」と納得。伏線が複雑だと、もう一回観直そうかなと思いながらも、二回観る覚悟はなく、結局観ないのが常の私にとって、この伏線の塩梅はちょうど良い。心地よいほぐれ方。(逆に物足りない人もいるのかも)

その《オチ》に触れますが、
・主人公ハオの本当の奥さんイーハンは、ハオが殺していた。
・女子高生インインが見ていた幽霊は殺された奥さんだった。
・ハオが一緒に暮らしていたのは、前世で冥婚をした女性だった。
です。

映画は2つのストーリーが切り替わりながら進んでいきます。物語の主人公は二人、TVプロデューサーのハオ、そして霊感の強い女子高生のインイン(ちなみにハオはイケメンで錦織圭と工藤阿須加を足して割ったような感じ)。一見関係ないように見える2つのストーリーが、終盤交わります。まさか、インイン(女子高生)が悩まされていた黒い女の幽霊が、ハオ(主人公)の奥さんだったとは。ここまで書いてて思ったのですが、これ勘がいい人はすぐにオチに気づいたのかな?確かに、どことなく奥さん(冥婚した女性)が怖い感じはしたんですよ。まさか前世で冥婚した女性だったとはなぁ…。

●冥婚
冥婚とは《死者を弔う際、その魂がまだこの世にあるうちに、それと見立てた異性と婚礼を挙げさせ、夫婦としたのち、死の世界に送り出すものである。~Wikipediaより抜粋》で、実際に風習としてこの世に存在するものだそうです。映画の終盤、冥婚のシーンがあるのですが、恐怖100%というわけではなくどこか神秘的でもあり、あれを観るだけでも価値があると思います。病気で死んだ女性が花嫁なのですが、それを黒子の男たちが操り、無理やり主人公と儀式を行わせる。互いに血を飲ませ合うシーンとかは流石に気持ち悪かったですが。映画では生者にとって望まざるものとして冥婚を描いていますが、実際はどうだったんでしょうね。赤い封筒を拾うことは忌むべきことだったのか、それとも名誉なことだったのか。

●霊媒師の先生
この映画はさすがに事実に基づいているだけあって、あまり派手に死ぬ人がいないのですが、そんな中で唯一派手にお亡くなりになるのが霊媒師の先生。ハオを除霊してくれている最中、相手の霊に負けて自分の耳に金属の串を刺して死んでしまいます。先生は見た目も、その仕事場・道具からもなかなかの手腕と見受けますが、そんな先生があっさりと殺されてしまいます。ハオに取り憑いている霊の怨念の強さが伺えます。ちなみに、アマゾンプライムではこのシーンが映画のサムネイルとして使われており、完全にホラー感を醸し出しておりました。

●クローゼット、ベッド下
ホラー映画に確実に出てくるのが《クローゼット》や《ベッド下》。もはや、そこらの中途半端な幽霊より怖い。小さい頃(むしろ大人の今でも)、やはりクローゼットやベッド下が怖かったな、こういう映画を見た後は。クローゼットにしてもベッド下にしても何故恐怖の対象(アイコン)たり得たのかはちょっと考えてみる題材としては面白そうですね。

ベッド下はなんとなく想像がついていて、それは「ベッドの上と下の距離がとても近いのに、上から下が見えない」から、だと思います。文字にしてみると当たり前過ぎるな^^;仮に遠くから恐怖の対象(仮に幽霊としますか)が迫ってきているとすると、いろいろ対抗策は取れると思うんですよ。どこかに隠れるとか逃げるとか、何かモノを投げるとか。ところが、ベッドの上から下を覗くとすると、もうスグそこなので、ベッドの下に何かいたとしてもあまり対抗する事ができないですよね。そのあたりが恐怖の源泉のような気がする…。

クローゼットはなんだろうな?何かがクローゼットに潜んでいたとして、部屋の中が明るければ、クローゼットからは外が見えるけど、外からクローゼットの中は見えない(暗いから)。つまり、一方的に見られている恐怖。ちょっと弱いかな。

今思いましたが、ベッド下もクローゼットも《自分との距離が近いこと》が恐怖の原因ですね。当たり前っちゃ当たり前だけど。ベッド下もクローゼットも《自分の部屋》という最も小さい空間の中にあります。本来侵入されたくない空間に異質なモノが潜んでいるかもしれない恐怖。

人間の脳は石器時代以降あまり進化していない、という文章を読んだことがあります。どんなに怖いモノであったとしても《遠く》にいれば、まだ耐えられる。それがこちらに向かって動き出すと、途端に恐怖感は高まる。逃げ出したくなる。近かったらなおさら怖い。

幽霊とか呪いとか、一見物理に支配されない要素のようで、やはり《距離》が恐怖とは密接に関係している。貞子だって近づいて来るから怖いんですよね。オット、かなり脱線してしまった。


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ということで、みなさんも赤い封筒を見かけても軽い気持ちで拾わないようにご注意ください。また、クローゼットやベッドの下にも注意してください。
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