都部

映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険の都部のレビュー・感想・評価

3.5
『狂気の山脈にて』を想起させる物語ですが、その手の神話関係はあくまでも触りとして留めて、ドラえもん映画のフォーマットを適切に熟しながらも南極に存在した古代国家に纏わる謎とそれが持つ神秘性への接近を魅力として据えることで独自の立ち位置を確保している作品であるように思います。今回の作品 登場人物が最初から最後まで変わらないというか、意図的に事件を通した成長を省いているのも独特。

新天地に訪れた際の面々の遊戯シークエンスをOPの背景として早々に消化する始まりからして異質で、あくまでも南極に存在した古代文明の謎の探求の為の展開を次々に投じてくるのが新鮮で良かったですね。話の起伏が乏しいようで、的確にイベントを配置しつつ、その複雑な設定を呑み込みやすく整理して その上で余白を持たせて語るという面白い作り。シンプルだからこそ美麗さが目立つ作画により南極という舞台の巨大な規模感を演出することにも成功できていましたし、作品の傾向に準じた要素の揃い方が大変綺麗で纏まりがあるのも好感が持てる。

ドラえもん映画に付き纏う過去と現在の行き来に大きな意味を持たせる展開も好ましくて、時間差を駆使した布石の拾い方は捻りが効いている。また地学とSFを交えた舞台や現象の理由付けは、往年のドラ映画を思わせるすこしふしぎなSF味を感じさせるものでそれもいいですね。

偽物のドラえもんとの対峙が本作の最大の盛り上がり所であると思うが、個人的には劇伴の重厚さが素晴らしいなと思って、本作で取り質される神秘性の補強材料として有機的に機能しているように感じられた。
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