蛸

新感染 ファイナル・エクスプレスの蛸のレビュー・感想・評価

4.2
一言で言うと、「自分のことしか考えていない人間はゾンビと同じである」っていう映画。
ファンドマネージャーの主人公は「みんなの血を吸って生きている」と揶揄される、まさしく自己中心的な吸血鬼=ゾンビだったが物語の中で成長して人間性を取り戻していく。
乗り物パニック映画×ゾンビ映画という趣のある一本だけれど人間ドラマ(特に家族間の)の要素が非常に大きい。
確かに大量のゾンビが雪崩のように襲ってくるシーンは『ワールドウォーZ』に匹敵しかねないインパクトがある。しかし、ゾンビを倒すカタルシスがあるタイプの作品ではない(圧倒的にゾンビ側が強いので。)その分、ドラマ部分の丁寧な描写が光っていた。
車窓からの景色は前映画時代における映画的視覚経験だけれども、車窓=スクリーンの向こう側の存在だったゾンビが内部に浸入してくる展開は非常に理に適っていると思った(「見る」ための距離の破壊=恐怖)。列車が舞台であることの利点としては他に位置関係のわかりやすさなんかがあると思う。
ラストシーンは一捻りした『ナイトオブザリビングデッド』オマージュかと思ったけど考えすぎなのかもしれない。
とにかく最初から最後まで山場の連続で全くダレることがない。あの手この手で観客を楽しませる素晴らしい娯楽作。
蛸