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ハーメルンの笛吹のkmtnのレビュー・感想・評価

ハーメルンの笛吹(1933年製作の映画)
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ハーメルンの笛吹というと、過去にドイツのハーメルンにて実際に1284年に起きた事件として著名。
最近は東ヨーロッパへの移住説が支持されているとのことであるが、集団自殺説であったり、祭りに向かう途中での事故による大量死説であったりと……様々な説が流布している。


八分間という短い時間で描かれる本作は、内容的にはよく知られる絵本などの内容そのままであるが、
子どもたちが結局帰ってこないまま終わってしまうというところが、子ども向けながら、元々の伝説を割と忠実に再現している。
また1933年公開ということもあるのか、現代的なマイルドさがあまりない。
街の大人たちも非常に小狡い様な表情で描かれている。


またハーメルンの子どもたちが、大人たちに酷使され、労働に従事させられているのも本作の特徴で(絵本でその様に描写されているものは観たことがない)、
そこからの救済、セイバーとしての笛吹き男像は、ある種ヒロイックでさえある。
結局、子どもたちが帰ってこないというオチなので、言ってしまえばかなり後味の悪い最後の為、
少しでも大人達の酷さを理由づけしたかったのかもしれない。


初期ディズニーらしい、愉快なアニメーションであるが、元々の伝説が持つ仄暗さがなんともいえない気分にさせてくれる一品。


余談であるが、浦沢直樹の名作「マスターキートン」でもハーメルンの笛吹きを題材にした話があるのだけれど、
これがハーメルンの笛吹男と、ナチスドイツとジプシーを絡めた、なかなか面白い中編作品なのでおすすめです。
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