垂直落下式サミング

ゴーストヘッド ~熱狂的ファンたちの今~の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
先日コスプレのイベントに行ってきた。以前から露出度の高い服を着る女性コスプレイヤーの人に対して、「どこまで淫乱なんだお前ら!」という童貞拗らせ男子特有の偏見を持っていたんですけど、実際に行ってみて、この夏の熱気を体感してしまったら、とてもじゃないけどあのくらいじゃないとやってらんないと、偏狭な考えを改めさせられました。逆に厚着してるやつは狂ってると思う。
会場の雰囲気をみるに、彼等が何を求めて来ているのかは様々で、わりと軽い気持ちで友達や仲間に会いに来るアクティブオタから、完全にその人物になりきっているガチ勢、イベントとという免罪符を得た露出狂・女装癖などまで幅広く、老若男女魑魅魍魎の巣窟であった。
やっぱり少年ジャンプや新作アニメ、有名テレビゲームの仮装だとかが人気なんだけど、映画のキャラクターも多い。仲間で連れ立ってそれぞれがアベンジャーズメンバーに扮していたり、いい支配者になったイモータンジョーが給水所で水を配っていたりと、あんまり最近のアニメに明るくない人も受け入れてくれる趣味空間だったので楽しめた。

さて、本作は『ゴーストバスターズ』の熱狂的ファン集団ゴーストヘッズたちの活動を撮影したドキュメンタリーだ。ヘッズと呼ばれる人々は、各々がバスターズの一員という信念を持ってコスプレをし、今もなお熱心なファンであり続けている。自作したプロトンパックを背負った連中が、いい歳こいてはしゃいでいる様子が映し出される。
残念なことに今回行ったイベントでバスターズに扮している人を見つることはできなかったが、本作をみると、『ゴーストバスターズ』がアメリカではある層から熱烈な支持を得ている映画だということがわかる。
そんなわけで、もちろんファンならではのオリジナルへの思い入れや、リメイクへの期待など、作品への愛があふれる視点は見物なのだが、とりわけ胸を撃たれたのは、ヘッズが病気で入院している子供たちのところに慰問をするシーンだ。
彼等が子供たちの前で、「バスターズが応援してるぜ!みんな頑張れよ!」みたいなことを言って回るんだけど、その様子をみて、もしかしたら俺がやりたいのはこういうのなんじゃないか?と思わされた。
これ日本でもやれないかな?日本のコスプレイヤーがすることは、主にコミケの賑やかしだったり、各々の撮影会をしてTwitterに写真をあげたりするくらいで、やっぱりそれは個人的な趣味の活動の域をでない。
「好きでやってんだ」と言われればそれまでだけど、普通だったらなんにもならないような知識や個性を、どういう形であれ個人が社会に還元できれば、なにか社会全体の風通しがよくなる気がするんですよ。
ちょっと前に、孤児院に伊達直人と名乗る人物からランドセルが贈られる「タイガーマスク運動」というムーブメントが話題になったことも記憶に新しいが、こういうのを個人やサークルが継続してやれたら、とっても素敵なことだと思う。
次は自分もコスプレに参加するところからはじめてみようかな。