韓国映画史にその名を刻むイ・マニ監督。
1967年公開の「帰路」です。
＊＊＊＊
とある家庭から話が始まります。
二階で小説を書くドンウはかつて朝鮮戦争の負傷で性的不能者になってしまっています。10数年間夫として役を果たせておらず、妻は幸せであるわけがないのに離婚もしていない・・。
それ以上に夫ドンウは戦場で仲間を死なせてしまったことを苦しんでいて、その様子に妻も苦しむ日々。
冒頭の、戦闘中の激しい音と軍歌の中、軍服で床に悶える夫ドンウの画は地獄絵図！

ドンウの連載小説はまるで自身夫婦を描いていて、そこになにやら理想と謝罪とないまぜになったものがあり、実際の妻は妻で憐れみと誇りと意地を通す逞しい内面でありつつ、夫の煮え切らなさにうんざりしているという・・もうぐつぐつ煮立った鍋をじっと見ているだけのような映画ですｗ
しかしそこで妻は、ある男との・・・「行け―！燃えろー！それこそが人間の本能に忠実な道だ！」

風景や人物の背景ロングなどでとても構図的に美しい画がたくさん登場します。
まあどう言ったらつたわりやすいかなあ・・
あのイタリアの「ひまわり」のラストとか、ホームで汽車を見送るショットあるじゃないですか！三分割法にも基づいた、遠近感を感じさせる美しい画。あんな感じです。

イ・マニ巨匠にはフィルム喪失の「晩秋」という名作があるんですが、その作品、冒頭出てくる女は仮出所というか用事を終えたら刑務所に戻らねばならないんですね。同行している刑務所員がいますが、電車の中で男と出会ってしまう・・その女は夫殺しで服役中。何度もリメイクされているのでわかるわけです。
さて、この「帰路」って「晩秋」に繋がっている説があるそうです。
両方ともムン・ジョンスクさんが演じているのも大きいんだろうなあ。観客は容易に脳内一致させてしまいます。
そして・・この夫は殺される理由がある！！犬派としてこれは・・


<940>

• #韓国^_^