くりふ

虹に向かってのくりふのレビュー・感想・評価

虹に向かって(1977年製作の映画)
3.5
※特集上映《アニメーションの神様、その美しき世界 Vol.2&3/Bプログラム:岡本忠成作品〈4K修復版〉》で見たのですが、以前のサイトにはあった、全体ページがないので、各作品に同じ内容で投稿します。作品は重複してしまいますが、ページ移動の手間は省けます。

【アニメはこんなにも豊穣だった】

川本作品と連続でみましたが、レベルが凄くて貴重な体験となりました。映画館でみられてよかった。でも、シネコンにかかるメジャーなアニメばかり追っていても、この豊かさには出会えぬことでしょう。

●「チコタン ぼくのおよめさん」(1971年/11分)

子供向け説教話かと思ったら、合唱ミュージカルアニメとして完成度スゴくて驚いた。古さ感じず、素直にワクワク。が、ラストの叫びにやり過ぎ感。ココ、発注者からの注文ありきで始まった気がする。物語としては別の結末にした方が、ずっと世界が広がったのでは。

●「サクラより愛をのせて」(1976年/3分)

笑った。こうした(子供も見られる)大人向けお笑いアニメなんて、見られる機会なくなっちゃったから、新鮮でさえありました。

●「虹に向って」(1977年/18分)

主演人形カップルが本当に、虹に向かって走り出した時は笑っちゃったけれど、それ以外は…泣いたよ泣いた。かつて純愛とはこうだった。機織りの緻密な動きが素晴らしい。そして、愛で架ける橋に、キチンと工法の裏付けがあって感心する。大人の映画ですね。

●「注文の多い料理店」(1991年/19分)

これは以前にみているが、美術素晴らしくも、びっくり映画としてまとめているので食い足りなくて。ご本人が完成前に亡くなってしまい、川本監督が仕上げたそうですが、その影響が大きかったのだろうか。作り手としての方向性、違うからね。…化け猫女はちょっとスキ。

●「おこんじょうるり」(1982年/26分)

登場するのはホンワカ人形ばかりなのに、鮮烈な情念話を繰り広げて驚く。これは素晴らしき完成度ですね。的確に使われる浄瑠璃が、いま聞いても突き刺さり、癒される。その威力にも驚く。“通力”の胡散臭さ。それで人を救うことの限界。おこんよぉ~…泣いたよ泣いた。

…やはり、“アニメの国宝”とは大袈裟ではない特集上映でした。客寄せファストフードの量産ばかりでなく、こうした財宝の掘り起こしも本当に大切だと、改めて思ったことでした。

<2021.5.31記>
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