自分が最も好きなジャンル、ポリッツィオテスキ(=マカロニ・ウェスタン衰退後の70年代イタリアで一瞬流行ったグルーヴィーな刑事モノ。またはイタリア版・東映実録路線)の作品群について当事者インタビューを交えながら楽しく紹介した力作「ユーロクライム」で度々フイルムが使われていた本作。かつてヒッソリと発売されていた国内盤DVDが手に入ったのでさっそく鑑賞してみた。
一匹狼のハミ出しデカが様々な妨害にもめげず独自の嗅覚と執念で麻薬密売組織を追い詰めるというステレオタイプだが、演出のせいなのか脚本のせいなのか、テンポが悪くて話しの流れが掴みにくいったらない。
じゃあつまらないのか、と言うとそんな事はなくイイ女にイイ男、スタイリッシュな衣装や味のあるインテリア、可愛らしい70's欧州車による激しいカーアクション、コンプラ度外視の下品な台詞、容赦ないバイオレンス、ファンキーなサントラといったこのジャンルに期待する旨みがたっぷりと味わえて満足度は高い。
ラフなスタイルを粋に着こなす主演のフランコ・ガスパリは、モデル上がりのイケメンで佇まいに独特の色気がある。アクションが少なくチョイ物足りないが、キメキメのポーズで銃を撃つ姿は中々カッコイイ(いつも撃ち損ねてるけど)。それと彼の飼っているセントバーナードがかわいくて映る度に和んだ。
ヤク漬けにされた挙句いつの間にか殺されてしまう薄幸の女を演じるサラ・スペラッティーは、イタリア人にしては薄味な哀愁漂う端麗美人。ヤクのためなら誰とでも寝る女という設定ながら実際のエロシーンは一瞬たりとも無い(べ、べつにガッカリなんてしてないから..)
原始人顔の大男グルーベルも見た目に違わず凶悪でいい。最期はマルクに余裕で凹られちゃって実は弱かったんじゃね?という疑問を残すが、チェックのダブルジャケットに超絶フレアパンツ&ロンドンブーツというシャープなコーディネートがばっちりキマっていたのもまた意外であった。ちなみにこの俳優は元プロボクサーらしい。
サントラはこのジャンルでもお馴染みイタリアの名匠チプリアーニ。唸るワウギター、パーカスに乗せたチェンバロがムードを盛り上げるテーマ曲が最高にカッコよくノッケからシビれる。エレガントかつファンキーな、これぞまさにイタリアン・レアグルーヴ。
このサントラのためだけでも本作は観る価値があるだろう。DVDのパッケージにも映画の内容そっちのけでサントラの事ばかり書いてあるのも納得だ。でも酷いよね、少しは内容のことも書いてあげてください。