ヒナ子

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのヒナ子のレビュー・感想・評価

3.7
私が東京に持っていた感情とあまりにシンクロしていてゾッとした。バスタ新宿のエスカレーターを降りたときに見える新宿駅と大きなルミネの看板は、私の最初の記憶の東京だったし、あの光景を見て足がすくむ気分だった。嫌いなはずなのに私は東京という街にいる。当たり前に人が死んでいき、当たり前に見知らぬ人間と寝て、それでも当たり前に電車は回り、スクランブル交差点には毎秒数え切れない人間が横切る。その中で声をあげようなんて、何かを変えてやろうなんて、無理に等しい。ああ、上手く呼吸ができない。私が今ここで社会に中指を立てたとて、この雑踏の人間が何人振り返るだろう。足元を見つめる。やっぱり、孤独に東京は似合わない。
同じ呼吸でこの街で生きてゆけるひとが1人隣にいるだけで私の心はまるで神に救われたように穏やかになる。街や雑踏を憎んでも、その中心で寄り添う2人は、2人ぼっちで広大な草原の中にいるよりもずっと強く愛せると思った。
ヒナ子

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