ベンジャミンサムナー

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺんのベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

4.0
日本人にも取っつきやすいシンプルな絵柄と内容でありながら、輪郭線を排したパステル調の色彩でフランスアニメ(デンマーク合作だけど)らしいオシャレな雰囲気も兼ね備えてる。

全体を通して印象的なのがサーシャの顔の前に垂れる一筋の髪の毛。
あの一筋の乱れた髪によって彼女が社交界、貴族社会からはみ出した存在である事を視覚的に表している。

「割りとあっさり北極にたどり着くんだな」と思ったが、そっからの描写が容赦ない。
こういう冒険モノって仲間達の絆とチームワークで困難を乗り越えていくものだが、飢えによって船員同士で食料を奪い合う場面は「このシンプルな絵でそこまで描くか!?」と驚愕。
ただでさえ極寒の北極なのに「真に過酷な環境は信頼さえも断ち切る」という描写でさらに背筋が凍った。

方位磁石とそれを見つめるサーシャの表情と裸足のクローズアップだけで北極行きを決意する彼女の心情を表現したり、祖父と彼女の顔の切り返し等、情報量の少ない画面ながらも視覚的で雄弁な演出力に脱帽。