「渾身ＫＯＮ－ＳＨＩＮ」の錦織良成監督と主演の青柳翔さんが再タッグを組んで製作したのは本格時代劇。
この作品の主な舞台は、戦国大名たちが覇を競った安土桃山時代の奥出雲にある「たたら村」。
戦国時代劇と言うと、チャンバラや合戦シーンが山場になるが、本作でも同様にそれらが見せ場になってはいるものの“メイン”ではない。
「たたら村」では合戦の武器である刀や火縄銃の原料の鋼、それも出雲の門外不出の高度な技術「たたら吹き」による唯一無二の玉鋼を作っている。
刀の原料である玉鋼作りを通して、この作品は侍やその魂にアプローチしようとしている。
主人公で「たたら技術」を唯一継承する村下の長男である伍介は幼い頃に野盗に村を襲われたことがあり、何としても村を守る為に強くなりたいと思っている。
この作品は時代劇という形を借りて、一人の若者が抱くどう生きるべきかという葛藤や逡巡、新しい道を見出そうと試行錯誤しての挫折や苦悩、それらを経て、自らのバックボーンを含めて己を見詰め直すという、人としての成長を描いた青春物だと思う。
この青春ドラマを主演の青柳翔さんをはじめ、小林直己さん、石井杏奈さん、ＡＫＩＲＡさんという若手、ベテランの奈良岡朋子さん、津川雅彦さん、笹野高史さん、甲本雅裕さん、宮崎美子さん等、新旧キャストの組合せで描いていく。
そして本作で重要な要素となる出雲の自然と「たたら製鉄」。
映画に映し出される出雲は日本の心の故郷のように豊かで美しく、そして温もりがある。
また実際のたたら職人たちによって再現された「たたら製鉄」は“作り物”ではない“本物”さが伝わって来る。
日本古来からある伝統の技や心、それらが失われないようにという願いも本作には込められていると思う。
