JAmmyWAng

たたら侍のJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

たたら侍(2017年製作の映画)
1.2
「スッゲーいいカメラ使ってますね!!!ウェーーーイwwwww」という感じ。

この素晴らしいカメラが持つ広いダイナミックレンジによって、溶解する鋼が放つ強烈な輝きや、空の色彩の豊かな階調がとても美しく再現されているし、発色性も良いから臙脂(えんじ)や藍色の着物が鮮やかに写り込んでいるし、解像度も高いので草や葉や波のディテールがバッチリ捉えられていてもうとにかく文句無しにエクセレント。

言い換えれば、美術だろうが風景だろうがスクリーンはことごとくカメラの特性を強調する被写体で埋め尽くされており、Panavisionフィルムカメラのデモ映像としては大変良くできているなあと感心致しました。

そうしたカメラの性能によって純視覚的には目を奪われるほどに凄いのだけれど、それ以外はもうなんだか目も当てられないほどに酷い。何というか常軌を逸していると思う。

カットの繋ぎも台詞も間も脚本も人物造形も、驚くほどに平然と中身が無いというか、何かこう、すべてにおいて生気が感じられず、確かに登場人物達は何かを喋っていたのだけれどその内容は一切思い出せないし、物語は語られていたのかもしれないけれど正直ほとんど記憶に無い。

これはもちろん僕の妄想に過ぎないのだけれど、とにかくエンドロールに至るまでカメラのデモ映像を撮り続けたその執着性から想像すると、この人はカメラの性能に翻弄されていつの間にか自我を喪失してしまったのではないか。ガンダムWで言えばゼロシステムによって暴走したカトルみたいなものなのではないか。

そういうワケでモントリオールなんとか賞はPanavisionにあげたらいいと思うし、ヒイロ・ユイ風に言えばもう「自爆スイッチを押せ」と思った次第でありました。
JAmmyWAng

JAmmyWAng