柏エシディシ

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択の柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
長らく日本公開を待たされていたケリー・ライカートのFirst Cow(2019)が遂に来月公開ということで、改めてフィルモグラフィを眺めていたら、キャスト陣にスコセッシ新作で印象的であったリリー・グラッドストーンの名前がある本作を見つけて、慌てて鑑賞。良かった。
うらぶれたモンタナの片田舎に住む女性たちのオムニバス。
3人の主人公たちはユルく繋がっているだけで、映画も凡百の群像劇オムニバスみたいな気の利いた展開や分かり易いクライマックスは迎えない。
ただ、同じ様な寄る辺無さを抱えている女性たちの心を繊細に掬い取る様に表象してくる。
ライカートは例によって、饒舌にストーリーを語らない。
いつもの様に勇敢にも、観客の感性や思慮を信頼して、映画を預けてくれる。
濱口竜介監督がお気に入りのオムニバス映画に本作を上げているそうだが、ナルホド、演出や演技を極限まで抑えて、言葉には言い表すのが困難な何かを引き出す手法は濱口作品にも通じる。
ライカート作品お馴染みのミシェル・ウィイリアムズ、そして名優ローラ・ダーンも、本当に素晴らしいが、リリー・グラッドストーンが更に素晴らしいので驚嘆。
日本版のビジュアルイメージは、「名前」の大きさで、クリステン・スチュアートが優先されてしまっているのが口惜しい(ただクリステンはクリステンで見事な助演でそこも、見どころ。ただのアイドル女優の器に収まらない人だ)。
淡いニュアンスの演技なのにキラーズ〜とは全然違う人に見える。
とても繊細な演技。一時期は役者業の引退も考えていた、という事。今後の飛躍に期待したい。
付け加えると、例によって、ワンちゃんも、良い。犬も、演技じゃない演技をさせられるのが巧い、ケリー・ライカート。
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