深谷守

ANTIPORNO アンチポルノの深谷守のレビュー・感想・評価

ANTIPORNO アンチポルノ(2016年製作の映画)
3.5
この映画に出ている筒井真理子が所属していた「第三舞台」が早稲田の雄で、一方で野田秀樹率いる「夢の遊眠社」が駒場小劇場で人気だった時代、感性に訴えることを最上とした小劇団ブームがあった。しかしそれは長続きせず、ストーリーに淫することを最上とする「静かな演劇」ブームがやってくる。この映画は懐かしき小劇団ブーム時の舞台を彷彿とさせる絶叫と狂気の作品だ。
映画には肉体とセリフが過剰に満ちている。観ている観客に同意は求めない。表現したい迸りを制御することなしに叩きつける。
ロマンポルノ・リブート・プロジェクトの一作だが、濡場を入れればいいという制約を逆手に、かつて園子温自身が作っていた自主映画を見事に再現してみせた。
ポルノ映画としては全く役に立たず、アートでもなく、言葉では定義できない不思議なテイストの映画になった。
やっとロマンポルノ・リブート・プロジェクトの全5作品を観たが、一番いいなと感じたのは「牝猫たち」だった。他もすべて平均点を超える映画ばかり。こういう試みはたまにあっていい。
深谷守

深谷守