深谷守

We Love Television?の深谷守のレビュー・感想・評価

We Love Television?(2017年製作の映画)
3.0
採用面接で学生たちのテレビへの思いを聞き、家に帰って配信でも観ようと思ったらちょうどこのドキュメンタリーがあったので鑑賞。

前に萩本さんがMCの特番を作ったことがある。世の中にある様々なビデオや写真にフォーカスした企画で、監視カメラの映像を集めたり、衝撃映像を集めたりという番組。
番組のメインネタとなる、結構長期にわたって撮影していた壮大なドキュメンタリーコーナーが我々の最後の詰めのミスで放送できなくなってしまった時、萩本さんにロケに出てもらうことにした。街行く人に「誰かへのビデオメッセージ」を語ってもらい、それを欽ちゃんが届けるというザックリとして雑な企画だ。
萩本さんはピンチを面白がり、提案に乗ってくれた。
どこでロケしますかと聞くと、あまり東京から離れていないちょっと郊外の駅で街の人にインタビューしたいという。
数人にアイドリング的にインタビューした後、萩本さんが「この子で勝負したい」という一人の高校生の「祖母への感謝」ビデオレターを撮った。そしてそのままその子供の家について行く。
祖母とは同居しており、その高校生は毎日顔を合わせている。しかし毎日顔を合わせているとわざわざ言わないことを欽ちゃんは丁寧に引き出す。孫のビデオレターを祖母の部屋で見せて、さらにその返信のビデオレターをまた自分の部屋にいる孫に見せる。これを何回か繰り返し、最後にはお互いの胸に秘めていた相手への思いを打ち明けるという、涙なくしては観られない大感動コーナーになった。
この時、我々は萩本さんから「奇跡」というプレゼントをもらったのだ。

我々はその贈り物にささやかなお返しをすることになる。
萩本さんから「スタジオ収録の最後にちょっと時間を欲しい」とお願いされた。そこで自分が連れて来るゲストを出して欲しいというのだ。我々はもちろん快諾する。
スタジオ収録の最後、欽ちゃんが連れてきたのは、当時闘病中だった二郎さんだった。脳梗塞で倒れ、言葉も満足に話せない。身体にも麻痺が残っている。リハビリを拒否し、寝たきりになっていたかつての相棒にもう一度、客前で出て、生きる望みを持って欲しいという思いで、引きずるように連れてきたというのだ。
スタジオの客の暖かい拍手を受け、数日後、坂上二郎さんはリハビリを再開する。そしてしばらくして、舞台に再び立てるまでに回復をして行く。
なんか作ったような奇跡の話だが、実話である。

萩本さんは奇跡の人だ。視聴率100パーセント取っていたことだって、オリンピックのMCをしたことだって、みんな奇跡だ。
欽ちゃんマジックの一端を描いたこのドキュメンタリーを観て、自分が経験した奇跡を久しぶりに思い出した。
深谷守

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