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アシュラのmatchypotterのレビュー・感想・評価

アシュラ(2016年製作の映画)
3.9
韓国ノワール。
韓国らしい人の権力と金と欲にまみれた世界を描く。

妻の病からお金欲しさに汚れ仕事をする刑事。

決して綺麗ではない資金力と圧倒的な推進力と権力を携えて邪魔者を排除しながらやりたいことをやりぬく剛腕市長。

その市長の悪事を暴くため証拠を掴むのに手段を選ばない検察官。

汚れ仕事を刑事に依頼する市長。
それを嗅ぎつけた検察官が刑事をスパイ化し市長の証拠をもぎとろうとする検察官。
そのものすごいマウントの取り合い、駆け引き、腹黒さの中でものすごい“板挟み”となる刑事。

ぐいぐい強気に思惑通りに行政を進めるワンマン市長、ファンジョンミンのしたたかさ、、、劇中にも言われているが、本当に“無敵”か。

表向きの政治家の顔を保ちつつ、なんとえげつない裏の顔か。“面の皮が厚い”みたいなレベルどころでない。もはやマフィア、ヤクザレベル。

検察側も刑事にあれこれ無茶ブリしまくりのオンパレード。それに巻き込まれる刑事とその後輩。

ただの“腐敗している政治の汚職に対する正義の取り締まり”というわけでもない。
もはや正義を振りかざして真っ当に立ち回る人間は誰1人いない。

平気な顔して出し抜くし、自分の力で真相を隠蔽するし、自分のためなら誰でも何でも利用し、敵対してようが相手の上に立てばそれすら飲み込んで自分の力にしてしまう。

そんな腹黒く、仄暗く、バイオレンスな有象無象の政治と犯罪の上のパワーゲーム。

とにかく主要なメンバーそれぞれが濃い。強烈。
ファンジョンミン、チョンウソン、チュジフン、クァクドウォン、、、。
見た目も、キャラクターも、内面も、一癖も二癖もある強力なキャスト布陣。

もともとグレー、いや、ギリギリブラックな背景があり、その上を踊る者、踊らされる者、殺されかけて寝返る者、、、。

皆が皆それぞれの思惑がある。
鍔迫り合いがああったり、だまくらかして情報を得ようとしたり。

そして、皆が皆で工作がエスカレートしていき、ボロが出たり、弱みを掴んだり、お互いの傷口に塩を塗り合ったり。
1つ弱点をつかれれば、それをとりかすかのように相手の弱点を探す。

一度“裏”を知れば知るほど引くに引けない、泥試合。
一進一退の攻防に疲弊しながら、最後の最後までパンチを繰り出すことをやめないタフなパワーゲーム。

攻めることをやめてしまえば、そこから相手に攻められる。
終わりなき消耗戦のような、最後までどんなことがあり、それで誰が誰を出し抜くか先が見えない。

そんな中を最後まで立っている人が正義となるこの世界。
刑事を介してお互いの駆け引きをしていた両者が最後は関係者一同が会す。

この最後で起きること、それまでの流れからのこのインパクトがすごい。
韓国らしい骨太なバイオレンス×クライム×サスペンス。

ファンジョンミン、最高。この市長はあくどすぎ。さすがに。


F:1884
M:7529
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