1990年代、アメリカのホロコースト研究者デボラ・リプシュタットが、ホロコースト否定論に真っ向から立ち向かう法廷劇。
映画としては普通だったが、今月アウシュヴィッツにいく身としては良い予習になった。
アウシュヴィッツでの現地調査のシーンは特に勉強になった。
主人公デボラの対戦相手は、代表的なホロコースト否定論者のデイビッド・アーヴィング。
数多くの資料に精通してはいるが、歴史学者ではなく作家である。
1990年代に「ガス室では誰も死んでいない」などの主張を行い、歴史学者たちと論争になった一方、ネオナチから厚く支持されていた人物だ。
ドイツやイギリスの裁判所からは、ホロコーストの事実を自分の思想と政治的路線に一致するように歪めて解釈しているとして、罰金刑が科されている。
ホロコーストがあったことは疑いようのない事実であるが、その否定論者は、歪んだ解釈や間違った情報をもっともらしく伝播することに長けている。
「死者数は600万人より遥かに少ない」、「どんな戦争でもあることだ」と被害を矮小化したり、「ホロコーストはユダヤ人の捏造で、賠償金目当てだ」という陰謀論を唱えたりする場合もある。
例えばホロコーストの犠牲者数については、犠牲者名簿が終戦前にナチスによって焼かれたりなどしたため、正確な数字が算出できないままであるが、だからと言って、ホロコーストはなかったというのは飛躍だろう。
このような主張は、日本の「南京大虐殺」にもみられるもので、歴史修正主義の動きは世界的に共通することが多いと感じた。
体験者が亡くなっていくなかで、世界中で歴史修正主義の動きが起こるだろう。
自分もそのような論調に振り回されないよう、事実を学んでいきたい。