主人公が抱える悩みが、若いが故の未熟さを内面的に抱え込んでしまっているという場合が多く、やはりこの映画は感情移入がしにくい。
彼は美少年で、多彩でセクシーで自然に美しい男女をも惹きつけてしまう。彼自身の描く葛藤はかなり緻密には描かれているが、彼に授けられたものの豊富さに伴い求めても求めずともなんとなしに何事も手に入るレールは敷かれている。
家族がこの映画にて、彼が求めているものに対して協力的すぎるのもそのレールの一つだ。
しかし、いかにも有識で良家で、描かれ方も巧妙なのでその協力的部分も、彼らが理知的であるためなのかとも思わされてしまう。
加えて、そのレール自体が彼がまた一歩先に行くための成長物語として成立させている。
書いていて思ったが、サスペリア が好きな自分にとっては割と絵面は緻密だがのっぺりしていて、期待していた人間関係での葛藤もいささかショッキングではなかった。ただ期待していたものではなかったので心に刺さらなかったというのが結論だ。