木曳野皐

君の名前で僕を呼んでの木曳野皐のレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
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“君の名前で僕を呼んで”
この意味が分かった、たったそれだけ。
このたった十文字が映画を観たあと、凄く愛おしい。
この数日ずっと考えていた。何故こんなにもこのタイトルが愛しく思え、あの夏が皆の心に残るのか。
そうか、やっぱりこの台詞の所為。
“君の名前で僕を呼ぶ”これって同姓愛にしか出来ない事だからだ。否、“出来ない”という表現は違うな、正確に言うと“似合わない”。同姓愛だからこそ「君の名前で僕を呼べる」この事実に気づいた時、数日経ってジワジワと感動が押し寄せて来た。

序盤、曲がり角を大きく回るエリオとスリムに回るオリヴァーに性格の違いが出ててそっからもう好きだった。
エリオが童貞を卒業するシーンが何よりもいい。やはり女を知ってる男の言う「男が良い」と、男しか知らない男の言う「男が良い」には天と地ほどの差があるのだな、と。
これは性的関係、及び恋愛観にだけ言えることじゃないけど、1つだけを知ってそれを追いかけ続ける事にハッピーエンドは無いと思う。数多を知ってこその選んだ1つに価値があるのだから。
あの夏はエリオとオリヴァーと皆の心の中に。
2人の自転車のブレーキ音と最後の暖炉の音がまだ耳に残ってる。
木曳野皐

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