このレビューはネタバレを含みます
17歳の少年と24歳の青年の、恋のよろこびと痛みを繊細に美しく描いたひと夏のラブストーリー「君の名前で僕を呼んで」。
エリオがバッハの「カプリチョ」を演奏するシーンからは、音楽がエリオの内面の葛藤や揺れ動きを感じ取れる。
話にたびたび出てくるギリシャ神話。ギリシャ神話には同性愛の神が多く存在していたらしい。それを聞くと、エリオとオリヴァーに上裸のシーンが多いのはそのオマージュで、愛の象徴としての2人を表現しているのかな。
果樹園で育てているのが甘くも酸味のあるアプリコットだったってゆうのもまた美しい。
劇中でオリヴァーが引用したヘラクレイトス「万物は流転する」、あらゆるものは時間の流れと共に変化していくという表現も、ラストに繋がってると思えば面白いなあと思った。
ラストの父親がエリオに美しい言葉を紡ぎながら、一度もはっきりとは言葉にしないけど、エリオの気持ちに寄り添いながらメッセージを伝えるシーンはグッときた。
以下引用
"私たちは傷が癒えるまで待ちきれずに次を求め続け、30なんて年よりも前に破産してしまうんだ。そうして新しい誰かに出会う度に自分が与えられるものが減っていくんだ。でもね、悲しみなんて感じたくないからといって、何も感じないようになること_なんて惜しいことをしてるんだ。"
"人生をどう生きるかは君の自由だ。だけど、これは覚えておいて。心と身体が私たちに与えられるのは一度きりだ。そして知りもしないうちに心は燃え尽きてしまうんだ。身体と同じようにね、誰も見向きもしないし引き寄せられもしなくなる時が来るんだ。今、悲しみと痛みがあるだろう。なかったことにするな、その前にあった喜びと一緒に味わうんだ。"