いとJ

君の名前で僕を呼んでのいとJのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.0
「君の名前で僕を呼んで」もらうということ……「自分は他人のモザイクである」、とか「重要な他者(significant other)を通して、自己が形成される」とか「関係の中で自己と他者が立ち現れる」みたいな、大学の講義で聞くような話をいろいろ思い出した。大切な相手の中に自分が見える、ということの最上のメタフォニカルな表現なのかもしれない。
ティモシー・シャラメは、英語・フランス語・イタリア語を話し、ピアノもギターも本人が割と長尺で弾くシーンがあり、さらに桃まで使って(笑)、終始すごい俳優だと思った。ラストシーンの表情の変化はかなり圧倒される。
そして素晴らしい映像と、それに調和する音楽。2人で自転車に乗って、ずっと画面の奥の方に続く道まで消えていくシーンがお気に入り。ピアノ中心の音楽(坂本龍一の曲もあった)は心地よく、またあるときは張りつめた感じで、映画を引き立てていた。

しかし残念なことに、僕はこの手の物語はほとんど心に刺さらなくて(同じように、かどうかはわかりませんが、グザヴィエ・ドランの映画もぜんぜん琴線にふれない……)、でも人によっては号泣されてる方もいて、それはたぶん好みというか、自分の気質に問題があるだけなのですが……。それでも、傑作だということはすごく感じました。
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