hitomi

君の名前で僕を呼んでのhitomiのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
2.8
文学的で美しい映画。美しすぎて、正直わたしには響かなかった。うーーーん、、、

でも、この作品の好きなところをいくつか。
まず、わたしはこの作品をLGBT映画だとは思わない。なぜなら、彼らをそうした括りの中で定義づけるのは不可能だから。人間誰しもが、女とか男とか異性愛者とか同性愛者とか、こうした区分の言葉では定義し尽くせないものだと思う。だからこそ彼らのように自由に惹かれるがままに動けばいいのだと思わせてくれる。女だから好きとか、男だから好きとか、そんなのどうでもいい。恋愛って、それだけじゃないでしょ?要素で人を好きになるのではなく、感覚で惹かれ合う。それが愛なのだと教えてくれる。家族愛もひとつの形。友情も然り。彼らを取り巻く人々がみんな素敵で良かった。誰も彼らを否定しない。特に主人公の両親が最高に素敵。文化的なものもあるけど、日頃から彼への愛を伝え、多くは語らず、遠くから見守る。いいですね。時代設定からは考えられないほど現代的というか、時代の流れに流されていない両親だなあ。職業柄ですかね。

そして、丁寧な生活がすごく素敵。庭のアプリコットや家族みんなでののんびりとした食事、川での水浴び、散歩。普段あんな風に生活できない自分からしたら、ものすごく優雅で羨ましい。その分現実離れしてしまっているのだけれど。

だからこそ、冒頭にも書いた通りあまり響かなかったのは、あまりにも美しすぎる表現ゆえかな、と。現実離れした優雅な生活と彼らの謎に包まれたバックグラウンド。彼らを美しく描けば描くほど、観客は彼らが「珍しいもの」「稀有なもの」として捉えてしまう。それが悲しい。ある部分は身近で綺麗な物語だったけれど、全てが身近ではなくなってしまってる。彼らのように生活している人がどれだけいる?彼らのようにやりたいことを全て望んで手に入れられる人がどれだけいる?現実をシャットダウンした閉鎖的な表現が残念でした。

とはいえ、美しく優雅な物語であることは間違いありません。素敵でした。
hitomi

hitomi