美しいものが大好きだ。
美しいものはいつだって、儚く官能的で、楽園と悲劇がよく似合う。美しさは一夏のバカンスのように一瞬で、終わりがくると知っているほど魅力的だ。
映画を見終わった後、サウンドトラックの視聴コーナーがあり、何気なくヘッドホンを取った。一曲流れるごとに17歳のエリオの美しくかけがえのない思い出が鮮明に蘇ってきて、切なくて泣けて仕方なかった。
好きな人を遠くから見つめる。
触れたくて仕方ない日々。
彼が帰ってこない不安な夜。
名前を呼びあう日の幸せ。
燃え上がった後の喪失感。
オリヴァーが汽車で去って行く時のエリオの寂しそうな背中。そんか失意に涙する息子を優しくよりそう両親が素晴らしい。とくにラストの父親の語りは、映画を見た若者すべてへのラブメッセージだ。
大丈夫、大丈夫と、めそめそ泣くエリオを抱きしめてあげたくなる。
映画が終わった後も、まるで自分の大切な人が悲しんでるような想いに胸が苦しくなるのは、『アデル、ブルーは熱い色』を観た時の感覚に凄く似ている。
もう、他人ではない感覚。
エリオを演じたティモシーシャラメは「あなたを愛した自分に最後の別れを〜」と曲が4分流れる中、泣き顔ひとつで世界中の心を掴んだ。