ハマボーイ

野獣のハマボーイのレビュー・感想・評価

野獣(2018年製作の映画)
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彼らと同じくらいの歳の時に、友達とよくふざけ合っていた。
ある日、なにが楽しかったのかお互いを思いっきり蹴りあって、本気で痛がってゲラゲラ笑ったりしていた。
蹴りの強さはお互いどんどんエスカレートしていき、自分のターンが来た時僕は全力で友達を蹴った。すると友達は蹴り飛ばされ、地面に頭を打って血を流した。
痛がる友達の姿、血の色を強烈に覚えている。
あれは自分がはじめて一線を超えてしまった瞬間だった。
友達は大丈夫、大丈夫と言っていたけど、あれから自責の念があり、次第に友達とは疎遠になっていった。

この映画を見た時に、電流が走ったように奥底に眠っていたその時の記憶が蘇った。
壮大で美しい景色は、ゾッとするほど不穏で心細いし、それは血を流した友達が急に知らない別人に感じた感覚に似ていた。
とにかく、短編でこんなに奥底の気持ちを突かれたのははじめて。

連日報道される子供だけで起こる悲惨な事故は、ニュースとして世の中に消費されるが誰かにとっては一生の記憶だ。
危険で儚い少年時代。彼は大人になってもキツネを見るたびにあの日の記憶を思い出すのだろう。
ハマボーイ

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