スローターハウス154

君の名前で僕を呼んでのスローターハウス154のレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.8
2020/3/29

夏の間あるいは夏の終わりに観ていたら...とゾッとするくらい、『スタンド・バイ・ミー』以来の、切なさが殺しにかかってきそうな作品だった。夏に観てしまったらもう致命傷負っていたかも。ということで、自分にとっては今が鑑賞のベストシーズンでした。今なら、今年こそは最高の夏を..という生きる希望を与えてくれますから。
とは言ってもさ、卑下しているワケではなく、同じ人間界の物語とは思えなかったのよ...人も自然も、そこに生まれる物語も美しさの局地で。まるでギリシャ神話に出てくる神々の日常を目撃したかのよう。こんな地上が存在するのか?神が創造したかとしか思えない、完璧な一夏すぎて。そういえば、『海辺のポーリーヌ』もこんなカンジで美しかった。
ここに出てくるものの存在が全て完璧であるけれど、エリオとオリヴァーの恋は、お互いがどう扱えばいいのかわからないくらいの激しさとぎこちなさを含んでいた。本当の恋とはそういうものなのであれば、その不器用な成り行きもまた完璧なものなのだろうか。
本当の恋に出会える人もいれば、出会えないで人生を終える場合もある。あるいは本当の恋だと自覚しても、タイミングを逃してしまって一生背追い込む不幸な呪いにもなりうる。その全ての鍵は、上手に自分の感情の声を聴けるかどうかにかかっている(あとは運)。
感情には賞味期限がある。まだまだ先だからとっておこう..と思ってた食い物も気づかぬうちに賞味期限を迎え、コレまだ食えんのかな..とおそるおそる食ってみたらやっぱりヘンな味になっていた、あるいは腹壊しちゃった、なんてことにならないようにしたい。つまり、美味しいうちに美味しく食っていきたい、感情も。ということ。心の動きに素直でいることがどれほど大事か..を語るエリオのパパの言葉が刺さります。

今年こそ帰りたくなるような思い出が欲しいなあ..