MasaichiYaguchi

くるみ割り人形と秘密の王国のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.3
ドイツの童話を題材にしたチャイコフスキーの代表作をディズニーが実写映画化した本作は、元となったバレエや音楽の要素を取り込み、美少女のマッケンジー・フォイをヒロインにして「アリス・イン・ワンダーランド」のようなダークファンタジーを繰り広げる。
つまり、原作の童話やチャイコフスキーのバレエ作品を大胆に脚色して、ディズニーらしいファミリームービーに仕立て上げているのだが、先に挙げたティム・バートン監督作品や「ナルニア国物語」と似通ったテイストが感じられて新鮮味はない。
この作品の目玉の一つと呼べるものは、黒人女性として初のプリンシパルとなったミスティ・コープランドと、英国ロイヤル・バレエ団で最年少でプリンシパルになったセルゲイ・ポルーニンという超一流のダンサーが圧巻の舞踊を披露していること。
そして二つ目は、ヒロイン・クララを演じたマッケンジー・フォイの透明感のある圧倒的な美しさと魅力。
このクララは、今時のヒロインらしく美しいだけでなく行動的で、敵とも果敢に戦う。
ダークファンタジーを基調とした本作だが、次女であるクララを軸にしたシュタールバウム家のドラマだと思う。
一家の中心にいた母親を亡くしたばかりで、喪失感に苛まれている家族はギクシャクしていて隙間風が吹いている。
そんな折、ある切っ掛けで秘密の王国に迷い込んだクララは、現実世界だけでなく、存亡の危機に陥っている王国とも向き合っていくことになる。
ただ本作で残念なのは、秘密の王国の危機の中で自分や家族を見詰め直すというクララの〝成長物語〟なのに、その肝心なところの掘り下げが足りないというか、描写が淡白で、ラストの方での感動的なシーンが心にいまいち響いてこない。