げんき

トゥルー・グリットのげんきのネタバレレビュー・内容・結末

トゥルー・グリット(2010年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

コーエン兄弟は好きだけど西部劇は全く見ないから、と先延ばしにしていた。これは良作。


そこそこに年老いた隻眼の連邦保安官コグバーン。噂によると凄腕で、実際自慢話が多い。しかも飲んだくれ。「父親の仇を取りたい」というマティの純粋な気持ち、そしてチェイニーしかり悪人を許せないという正義感。死刑の正当性を体現している?
トム・チェイニーに父親を殺され馬と金貨を奪われた少女マティ・ロス。コグバーンを雇い、形見のコルトドラグーンでチェイニーを殺そうと復讐に燃える。「眼には眼を」という自身の正義によって復讐。
自慢のカービン銃片手にはるばるチェイニーを追っていたテキサスレンジャーのラ・ビーフ。

要は自分の正義に則り復讐をする年端もいかない少女と二人の大人の冒険活劇。復讐という目的なんだけど、少女目線ということを踏まえてか全体的にゆるやかな空気が漂う。曲然り各キャラクターの喋り方然り。2人の男も。口ばかりで本当に凄腕なのか、と疑ってしまうことばかり。しかも道中よく分からん医者やインディアン?も出てくるし、辛辣な内容のはずがどこかポップな雰囲気を感じるのはコーエン兄弟らしさかな。画面の中で起きていることが分かりやすいのは今までより噛砕いた作りのような気もする。

アクションは常に遠巻きの出来事で、少女はそれを傍観している。夜の狙撃戦やロングショットでの1対4。緊張感があるようで無いようで。コグバーンが口だけでなく真の勇者(True Grit)だと分かるあたりから、ググっと見え方が変わる。テンポも一変する。復讐の代償を見せられる。選択と結果、予定から逸れていく現実。これはコーエン兄弟のいつもの。蛇の意味合い。

夕焼けを背景に走る馬、満天の星空の美しさ、馬の死、左腕、引退した生活。この辺りは西部劇の哀愁を詰め込んだようだ。はじまりと終わりはマティの電車での語り。なにかを失っている。得たものは何か。真の勇者、正義で動く姿勢、形あるものではないけど彼女の人生を形作っている。


・メモ
アンドリュージャクソン大統領―インディアン居留地―オクラホマ州
カンザス州ローレンスの虐殺
法定犯と自然犯
旧約聖書の教えと新約聖書の教え―眼には眼を歯には歯を、悪人に手向かうな、右の頬を打たれたら左の頬をも差し出しなさい
南北戦争におけるコグバーンとラ・ビーフの過去
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