『海の上のピアニスト』リバイバル上映に合わせて、監督の作品が気になり、手始めに鑑賞。
[あらすじ]
『ニュー・シネマ・パラダイス』で世界に名を知らしめた映画監督・ジュセッペ・トルナトーレ。
若冠33歳という若さで、アカデミー賞作品賞を受賞した監督の半生を、過去作品の抜粋と関係者のインタビューから紐解いていくドキュメンタリー映画。
[感想]
『ニュー・シネマ・パラダイス』を観た直後、「映画は人生だ」と思ったけれど、
本作を観た直後、「人生は映画だ」と思った。
[監督作品から語る人生]
僕のお気に入り映画のひとつに『ジャック・ドゥミの少年期』という作品がある。
この作品は、病気で余命幾ばくもない映画監督・ジャック・ドゥミさんを、妻で映画監督でもあるアニエス・ヴァルダさんがカメラに収めたもの。
劇映画と彼の過去作の引用、そして、現在の彼の姿を写し出すことで、その人生を切り取っていた。
今回のドキュメンタリー映画でも、そちらと共通する部分があり、「映画は偉大だけれど、映画監督の人生は、それ以上にドラマチックである」ということを再確認させられる一本だった。
[トルナトーレ監督の人生]
映画館バイトで同じ作品を何度も観て、映画を学び、16才で映写技師になったという監督。
その経歴には、なんとも『ニュー・シネマ・パラダイス』の映画大好き少年・トトの姿が重なる。
また、そもそも、写真を撮ることが好きで、一般の人をこっそり撮って、その物語を考えたり、『ニュー・シネマ・パラダイス』の着想を一枚の写真から得たりと、その行動は映画監督ならでは……。
『2001年 宇宙の旅』や『シャイニング』の名監督・スタンリー・キューブリックさんも、そのキャリアは雑誌カメラマンからだったため、写真などで構図にこだわる人ほど、名監督になる素養があるような気がした。
[監督と街と記憶]
『ニュー・シネマ・パラダイス』を初めて観た時、真っ先に浮かんだのは、自分と映画館の思い出だった。
そんな作品を撮った監督が、どのようなことを語っているのだろうと思って観ていると、本作では、監督が「映画は記憶と同じ」と語っている場面があり、とても共感した。
映画の中に生まれ育った街の姿を残し、『シチリア!シチリア!』では故郷の町並みを再現したという監督。
そんな彼の生きざまは、まさしく、「映画は人生だ」ということを体現しているようにも感じた。
[終わりに]
作品のみならず、監督の価値観や生きざまにも感銘を受けた本作。
音楽家のエンニオ・モリコーネさん、俳優のティム・ロスさん、モニカヴェルッチさん、例の騒動の首謀者wワインスタインさんなど、インタビュー映像に登場する人物も豪華で、監督の作品を一本でも観た人は必見の名作ドキュメンタリーだと思った。