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君の膵臓をたべたいのKEYのレビュー・感想・評価

君の膵臓をたべたい(2017年製作の映画)
3.7
「君の膵臓をたべたい」
社会人6年目、退職届を引き出しにしまう。
普段通り淡々と母校での授業を終え帰ろうとすると、図書室の整理を頼まれてしまう。
高校生の頃図書委員だった主人公は、病院で偶然あるクラスメイトの女の子の「共病文庫」を読んでしまう。
「共病文庫」には彼女が膵臓の病気を持っていて、もうすぐ死んでしまうこと。その事実を知ってから、その日までの日常が記されていた。
人と関わることを避け、感情を抑えて生きて来た主人公は、その本を見て焦る表情も見せずに彼女に返す。
それから二人は互いに興味を持ち始めるのだが…彼女は刻一刻と死へ近づいてゆく。

社会人6年目と言うが、今作の大半を高校生の頃の回想シーンが占めている。彼女と別れた後の数年間が全く描かれていないのだ。その為彼女との出会いによってできた友達や、彼女の親友との再会シーンにあまり意味は感じない。
きっと主人公は、彼女との別れから過去を思い返す今まで全く成長して無いのだ。
地味な主人公と正反対のクラスの人気者の彼女との出会いは、主人公の性格や周りの環境まで変えてゆく。迷惑がってはいるが、嫌なわけがない。その甘酸っぱい青春模様にニヤニヤしながら、冒頭の退職届のカットを思い出す。彼女との出会いの先に辛い別れを想像するのは容易い。
ラストは思いの外残酷だった。
しかし全く後味が悪くない。むしろ今作は、元気がもらえる映画だ。何故か。
それはやっぱり肯定的な思い出の描き方にあると思う。

28?にもなって高校の恋愛を思い出すのは、少し恥ずかしさがある気がする。しかし今作には、そんな羞恥心は全くない。
彼にとって彼女は、恋人なのか?友達なのか?親友なのか?あるいはただの〝仲良し〟なのか?
彼にとって彼女は、それら以上の自分の軸となる根底にある存在だったのだ。
退職届を描いた時は、彼女との思い出を心の奥にしまい過ぎていたのだろう。
「君の膵臓をたべたい」
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