NightCinema

バスターの壊れた心のNightCinemaのネタバレレビュー・内容・結末

バスターの壊れた心(2016年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

つかの間の幸せを感じながらも、家族を養う責任や将来の不安という重圧に耐えられなくなっていくジョナ。安宿での夜勤疲れも重なり、逃避願望と現実の境目が次第に分からなくなっていく。

夜勤明け後、自宅までの運転シーンの朝焼けがとにかく美しい。家に帰ると、朝食を取り始めるため狭いキッチンに家族全員が集まる。ジョナはそこで、幼い娘にスペイン語を教える。

ほのぼのした温かな風景でありながら、ジョナはその窮屈さを手放したくも思っていた。今より稼ぎのいい仕事に就くことに限界を感じて絶望し、本当は全部捨てて自由に生きてみたいという願望を抑えられなくなります。

精神分裂というか、倒錯していたことで結果的に愛する家族を殺し、後者を選ぶことになったジョナ。これも、彼の中のもう一人が望んでいたことだった。

テレビで怪しい講義をするメガネのやせ細った男性。「嵐をしのげる小さな島」―宇宙はリンゴの形。ひっくり返すと違う世界。日常の繰り返しから脱出できないと思っていたけど、もしそんな世界があるのなら?

ジョナは次第にその世界に魅了されていく。家族の葬儀か、小さな島への入り口か。彼は島を選んだ。倫理、責任、すべてを捨てた世界で生きるようになって初めて、本当は煩わしいサイクルの中で生きたがっている自分に気づくことになる。

最後、海に打ち上げられて家族の笑い声を聞いたシーンの伏し目がとても美しい。社会がどうかは知らないが、自分はこれで良かったのだ。精神の旅を終え、その思いに辿り着いた瞬間の安堵がとてもよく表れていました。

私は、ラストは逃げ切ったように見えて自殺したんだろうなと思います。

『Mr.Robot』の「バグ」「格差社会」「change the world」などとテーマ的に重なっている感じが偶然にも面白かったけど、この映画は倫理を無視したようなグロテスクなシーンが更に多く、紳士的なエリオットとはまた違ったラミマレックが観られます。
NightCinema

NightCinema