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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版の8bitのレビュー・感想・評価

3.9
もう一生観ることが叶わないと思っていた「牯嶺街」が、まさかの4Kリマスターでリヴァイヴァルされ、ついに私の街にやってきました。
もうワンシーン、ワンカット、交わされる言葉、ひとつひとつを噛みしめるように観た。

こんなにも長い時間、映画館の椅子に座り続けたのは初めて。
そしてこんなにも睡魔と闘った映画も初めて笑。

60年代初頭の台北で実際に起きたという、少年が少女を刺殺する事件。
それに至るまでを、当事者のみならず友人、家族、果ては無関係の人間までも丁寧に丁寧に丁寧に描き、事件当時の空気感を映画の中に蘇らせた。
スクリーンを見つめながら、自分の心は60年代台北の〝A Brighter Summer Day〟に飲み込まれていった。
淡々と描かれる日常が、少しずつくすんでゆく。
生き生きとした子供たちの様子に癒やされつつ観ていたのに、気付いたらとんでもないところまで来てしまっていた。
そうだった。この映画のタイトルは「牯嶺街少年殺人事件」だったんだ…。

光と影で紡ぎ出される繊細な映像と、間延びという言葉さえ無意味になる、ゆっくりとしかし確実に流れてゆく時間は心地よく退屈。
「1、2時間くらい寝てもいいよ」って言われてるような気さえしてくる。
コーヒーで目を覚ましながらっていう手もあるけど、そうすると今度は尿意がねえ…。
でもそんな睡魔が吹っ飛ぶくらいの良いシーンが沢山あった。

というわけで良かったシーンベスト3
・授業中に小四が217の連中に拉致られると、すぐさま仲間たちが椅子をぶっ壊し、武器をつくるところ。一連の動きがキレッキレで手際がいい笑。
・パーティで歌う二條がヴォーカルを小猫王へバトンタッチするところ。ま、まさかの美声。リトルプレスリー!!笑
・なんと言っても〝事件〟のシーン、周りの人たちが少しずつ異変に気付いてゆく様子にゾクッと来た…。

手放しで絶賛できるほど理解を深められた訳じゃないけど、ずっとずっと観たかった映画を最良の状態で観れたことはとても感激でした。

こうなったら〝小四〟チャン・チェンと〝小猫王〟ワン・チーザン、そして〝飛機〟クー・ユールンが再共演した「カップルズ」も是非是非リマスターしてリヴァイヴァル上映していただきたい。
リマスターされた「カップルズ」をスクリーンで観れるなら、全国どこへでも飛んで行きます!!
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