いずぼぺ

フェンスのいずぼぺのレビュー・感想・評価

フェンス(2016年製作の映画)
3.7
演劇の力

ある黒人一家の物語。舞台は1950年代のアメリカ・ピッツバーグだが、世界中の下町のどこでも舞台として成立するだろう。そして人種も大筋として関係ない。

この脚本のなかで描かれているのは、家族とはなにか夫婦とは何かという世界中で多くの人を悩ませている普遍的な問いである。
もちろん、この問いに対して明快な答えをお持ちの方もいることだろうけど体感少数派だと思う。

トロイとローズの間に起こった出来事はそうザラには起こらないかもしれないが、そこに至るまでの間に彼らの関係に蓄積した汚泥のような感情はどこにでもあるだろう。私のなかにもある。
これはきっと夫婦間の個人的な感情だけでなく、社会の構造から抜け出せないフラストレーションや、逆に収まろうとしたときの摩擦から来る苛立ちが混ざった感情なのだと思う。

ヴィオラ・デイヴィスとデンゼル・ワシントンが熱量の高い見事な演技で複雑な感情を表現している。

フェンスは外からの守りなのか、内から出ていくものを止めるものなのか。

10