AYA

ムーンライトのAYAのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.1
ある一人の青年が恋をした。それだけなのに、自分の居場所がなかった。ゲイというだけで。
普遍的な愛でありながら、ここまで美しく繊細な愛を初めて見ました。

マイアミの麻薬地区に住む、シャロンは、その内向的な性格、細く小さい身体から、"オカマ"と呼ばれ、イジメられていた。
家では麻薬中毒者の母親ポーラ(ナオミ・ハリス)の育児放棄に遭い、学校にも、家にも居場所がないのだった。
ある日、イジメっ子から逃げ隠れているところをその地区の麻薬ディーラーの元締めであるフアン(マハーシャラ・アリ)が見つけ、家に連れて帰ってくれた。そこからシャロンはフアンのことを慕い、家に通うようになる。
しかし、母親に麻薬を売っているのがフアンだと気付き、シャロンは彼から離れていくのであった。
そんな中、幼馴染のケヴィンへの恋心にも気付いていくが…。

Ⅰ.Little 、Ⅱ.Chiron 、Ⅲ.Blackの三部構成になっており、主人公のシャロンをアレックス・ヒバート、アシュトン・サンダース、トレヴァンテ・ローズと3人が演じ分けているはずなのに、同じ目をしていました。好奇心と弱さと空虚さを湛えた目。
映画の中で、確実にシャロンは生きていました。

フアンに泳ぎ方を教えてもらうシーン。
きっと、「人生という大海を、自分の力で泳いでいく大切さを教える」メタファーになっているのかな、と思いました。

最後、ブラックがケヴィンに告白し、本当の自分を曝け出しましたが、きっとそれによって彼は月夜の浜辺に立つ、ありのままの姿のシャロンに戻れた瞬間だったのでしょう。

淡い青い月の光の中、陽の光を浴びることを許されていないLGBTたちはひっそり生きている。光を浴びることを夢見ながら、優しい愛に包まれて生きている。
最後、きっとシャロンはその愛を見つけられたはず…。

「月明かりで、お前はブルーに輝く。」
AYA

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