O次郎

アンダー・ザ・シルバーレイクのO次郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

主人公の妄想とそれを真に受ける周囲とのアバンギャルドな世界が二時間半激臭を漂わせ続ける異色作。
理屈をこねくり回しているが、万人の理解できるところの理屈ではないのでまず間違いなく観る人を選ぶ中身。

セフレとダラダラ過ごしていた陰謀論・都市伝説オタクでニートまっしぐらの主人公が偶然出会った美女の突然の失踪に俄然やる気を触発され、その謎の解明に心血を注ぐ。
ニートのわりには社交的で場面転換が目白押しで画としての多様性はまずまずなのだが、肝心の「謎解き」が完全に彼の妄想を突き詰めた末の自己満足的な超回答なので真偽の定めようがなく、咀嚼に困ることこの上ない。まぁ、そういうテイストなんだからと言われてしまえばそうなのだが。

主人公がイケメンのガーフィールドなのでまだ成立するが、これがもしこの五月に公開されたマーゴット=ロビー主演のフィギュアスケートの実話ドラマ『アイ、トーニャ』に出てくる誇大妄想狂の知人男性のようだったらリアルながら醜悪過ぎて作品として成立しなかっただろう。
もっとも、この作品内での主人公の結末を考えると同じような末路を辿りそうではあるが...。

モチーフの戦前映画や女優、都市伝説等、背景を知ればより味わえる作品ではある。
が、個人的に妙に感心してしまったのが劇中の主人公の崖っぷち上記設定。
アパートの管理人から「あと5日以内に家賃払わないと退去してもらう」と宣告されているが、劇中時間が進むたびに「あと何日残ってるの?」と気をやきもきさせる観客のこちらの気もなんのその、主人公は全く気にせず自分の操作に走り回る...。
きっと退去のタイムリミットなんぞ忘れられるぐらいの心持ちが主人公を理解するのにちょうどいい、という作り手側のメッセージなのではないかと勘ぐってしまう。

しかしまぁ陰謀論者、普通なら自己嫌悪して鬱になりそうなニート生活をあれだけエネルギッシュに生きてるというのは類い稀な前向きさとバイタリティだと感心する次第なり。
O次郎

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