しなやかな肢体の隅々まで行き渡る神経の軋みも、筋収縮も、全てが見て取れ、耳まで届くような美しい舞い。
或るひとつの芸術として完成された美しさは勿論、単純に動物として、本能で嗅ぎ取れてしまう程に美しいセルゲイのバレエ。
知識がなくても分かる。
他を寄せ付けない圧倒的な才能。
努力。そして、痛み。
悔しくなった。
孤高であるが故に本当の意味で理解されることのない彼の苦しみは、僕にとっては羨望の対象でしかなく、恐らく彼の周りにいた人間もそうで、否、最早それすら通り越してしまったがために、手放しで皆、彼を称賛するのかもしれない。
そんなことを想像させるくらい完成されていながら、未完成な心に根っこまで惹かれてしまった。
「努力はしておいたほうがいい。そうすればあとは楽しむだけなのだから。」
そんなようなことを言っていた気がするけれど、正にそうで。
ぶっ叩かれたような気持ちだ。
その時が来るまで。
待たず、迎えに行く。