なっこ

ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣のなっこのレビュー・感想・評価

3.1
セルゲイ・ポルーニン、ウクライナ生まれのバレエダンサー。

まるで海外の自伝ものを読んでいくような構成。祖母や両親など身近な人のインタビューと幼少期からのホームビデオ、写真、本人が携帯でとっているような動画が重なり合って過去から現在へと時を紡ぎ、冒頭でチラリと見せた動画の撮影シーンへと向かう。

それは、YouTubeで再生2000万回を超えるデヴィッド・ラシャペルの撮影したミュージック・ビデオ『Take Me to Church』で踊る姿だった。

多くの人の心を引き付けたダンスはいかにして生まれたのか。そのことを明らかにしてくれる。

音楽の表現者としての踊り手。音楽があってダンスがある、そんな風に思われがち。でもこれは彼のための音楽がそこにあった。踊れる身体を持って生まれたのに、内なるリズムを完璧に表現することができるのに、なんでそんなに苦しそうなんだろう。“天才”だとか“異端児”だとかそんな称号は、本人が望んだものじゃなかった。
彼は一体何のために踊っているのか。何に苦しんでいて、何故苦しみの中でも踊り続けるのか。

生い立ちを振り返っていく中で、少しずつ分かってくる、舞台以外の彼の素顔。そうすると、全てはあの動画の前フリみたいになってくる。だから、気が付いたらそこで私も一緒に祈っていた。見つけて欲しいと思った。彼が踊る理由。踊り続ける理由。彼の存在意義を。
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