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武曲 MUKOKUのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

武曲 MUKOKU(2017年製作の映画)
4.3
「殺す気で突いてみろ! 」
矢田部研吾(綾野剛)は、まだ小学生だった自分に、日本刀を突き付けて剣を教えるような警察官の父親・将造(小林薫)に育てられた。 
おかげで腕は上がり、大人になって高校のコーチとして活躍していたが、父親とのある一件から、進むべき道を見失い剣も棄て今はどん底の生活を送っている。警備員として働いている時以外は、酒に溺れる毎日。 
研吾と同じ鎌倉の街に住む羽田融(村上虹郎)は、ラップのリリック作りに夢中の高校生だが、台風の洪水で死にかけたというトラウマを抱えていた。ある時、同じ学校の剣道部員にからまれ、剣の勝負でかたをつけることになる。 
融は剣には何の興味もなかったが、光邑の発する剣の道の言葉に心を惹かれ、また僧侶でもある光邑の泰然としたペースに絡めとられ、いつの間にか剣を習うことになる。 
師範の光邑雪峯(柄本明)は、融の剣の素質を即座に見抜き、研吾を立ち直らせようと融を研吾のもとへと送り込む。実は光邑はかつて、研吾の師でもあった。
翌日、研吾が道場に現れ、融が届けた封筒の中身の白紙を取り出し、「こんなイタズラ、やめてもらえますか」と光邑に怒りをぶつける研吾。 光邑から融をさして「今のおまえでは、この小僧にも勝てんぞ」と挑発された研吾は融と対戦し、光邑の言葉通り1本とられてしまう。
激昂して野獣のように暴れまくりフラフラと出ていく研吾を引き留め、酒をやめるように諭す光邑。だが、研吾は力なく笑うだけ。 
一方、研吾と剣を交わして以来、融の心はざわついていた。本気の殺し合いのような研吾の狂気の剣に比べたら、部活動での練習には何の刺激も感じられない。
かつて台風の雨で堤防が決壊した時、水流にのまれて死にかけた経験のある融は、生と死のあわいを、もう一度感じてみたいと思っていた。 
何年かに一度の巨大な台風の夜、突き上げる衝動を抑えきれない融は、研吾を待ち伏せる。 
「俺と勝負してもらえませんか」──遂に、嵐の夜に二人だけの決闘が幕を開ける。 藤沢周の同名小説を映画化した渾身作。
「剣は生きるか死ぬかだ」という父親と立ち合いそれが原因で剣を捨てた研吾。洪水で溺れかけたトラウマを抱え、死の淵を覗き込んだ恐怖と同時に生と死のギリギリの場に立ちたいという凶暴な衝動を剣にぶつけることが生き甲斐になっていく融。
父親に対する愛憎を抱えた研吾、生と死のギリギリのせめぎ合いを求める融それぞれの自分のトラウマや弱さと向き合って本当の強さを知る成長物語、研吾と融の葛藤そして剣と仏教を通じて描かれる本当の強さとはを焙り出す骨太なストーリー、クライマックスの研吾と融の暴風雨の中での死闘そして「活人剣」に目覚めた研吾と融の道場での死闘、まさにジョン・ウーが言う通り「伝統」と「現代」が融合した映画的で素晴らしい映画に仕上がっています。
厳しい肉体改造と修練で本格的な達人になりきった綾野剛、ラップと剣道の本格的なスキルそして目の演技が素晴らしい村上虹朗の演技が、印象的。
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