蒼井ことり

人生フルーツの蒼井ことりのネタバレレビュー・内容・結末

人生フルーツ(2016年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

タイトルがいい。生きるヒントがいっぱい。
人生は短い。いつ死ぬかもわからない。とにかく好きなことをやらなきゃ。それも、ちょっとじゃなくてものすごくたくさん、毎日好きなことをやらなくちゃ。

年をとるって憂鬱で嫌なことだと思ってた。でもこんなに楽しく豊かに年をとることができるんだなあって思った。
毎日好きなことをやって、1日1日を悔いなく好きな人と生きていれば、老いるのは怖いことじゃないのかもしれない。本当に怖いのは、後悔しながら老いて死ぬことなのかなって。

ご本人たちの良い気質(マイペースで楽天的、楽しむことが得意でクリエイティブだとお見受けした)と、相性バッチリの良いパートナーに巡り会えたことも、素敵な老後への影響大だと思う。
長く生きてきたご夫婦だから、当然嫌なことやご苦労も多かったと思うけれど(第二次大戦や5000人を超える死者を出した伊勢湾台風も経験されている)、それでもなお明るく、たくましく、生命力みなぎる生活をされている。

たくさんの農作物や緑に囲まれた自給自足の生活。素敵だけれど農業や林業は大変な労力だと思う。それを毎日、すごくテキパキさくさく、ルーティンでもなく楽しくやってる感じ。笑顔と会話が絶えない。
津端家にはたくさんのワクワクするルールやイベントもあって、朝目覚めるのが楽しいだろうなぁ(おたのしみ!っていう言葉、スゴくいいなぁ)。よく動き、よく働き、よく食べて、背筋もスッと良くて、電気ノコギリで木も倒せば、せっせと野菜の収穫も家事もする。
美味しそうなお料理やスイーツの数々も見ていて楽しい。90歳と87歳でこれだけのことをやれるんだ。ストレス溜めがちな人は病気をする、早死にするって言うけどその通りだと思う。

…修一さんの突然の死は想定外だったと思う。色つや良くてふっくらした死に顔は、まだ生きてるみたいだった。散歩に行って帰ってきて、昼寝してそれきり起きてこなかっただなんて、the老衰ですよね。あまりに唐突で、いつか人は死ぬとわかっていても、すごく悲しくて号泣してしまった。ねえ、修一さん、あなたの人生はどんなでしたか?楽しかったですか?きっと素敵な人生でしたよね?…そんな風に問いかけている自分がいた。
山の中の精神病棟のお仕事に、修一さんがもっと関わるところが見たかったな。。(設計図のイラストと文字に、あたたかい人柄が如実に表れていた)。

夫に先立たれても、英子さんの日常は変わらずこつこつ続いている。
1人で食べるご飯、さみしいよね。でも65年もの間、「最高のボーイフレンド」と一緒にいられてよかったですよね。修一さんの遺影にご飯を運ぶ英子さん。そのお料理が暖かくて美味しそうで、ものすごい愛を感じた。

奥様を「英子さん」ってよぶ修一さんが素敵だったなぁ。黄色い立て札と可愛い文字やイラストがほのぼのして癒された。こんな風に若い感性を保てたまま老いられるんだなぁ。
おのり、おともだち、なかよし…やさしい言葉遣い。とんがった言葉は要らないよね。
お金は残せないけど人と土を次の世代に残したいと願ったり、精神病棟の件で相談に乗っても「お金は要らないから安心して」と書き残してあったり、事業や計画が軌道にのると、自分はトップから降りてしまうという修一さんのお人柄がホント素晴らしい。人徳がある人は欲がないよね。元々たくさん徳を持ってるからだね。

そんな修一さんに見初められた英子さんも素敵。割れてしまった小鳥のお水入れの盆を嘆く娘さん?お孫さん?に対して、寿命と思って諦めましょ、悪いことは考えない、いいことだけ考えてればいいの、みたいな言葉が印象的。
自慢の父母、おじいさん、おばあさんで、娘さんの青子さん、お孫さんのはなこちゃんが羨ましい。
私も人生というフルーツを実らせたいと切に思った。
(ただし、誰もが実践できる生活ではない。この暮らしをするにはかなりの初期費用がかかるし、修一さんは才能のある方だったから。心意気の実践を目指そう)。
樹木希林のナレーションはいらないかな。
蒼井ことり

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