ノラネコの呑んで観るシネマ

雪女のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

雪女(2016年製作の映画)
4.2
小泉八雲の古典をベースに、新しい意味をもたせたユニークな佳作。
基本プロットは原作に忠実ながら、時代劇のような世界と昭和中期あたりが融合した、「蟲師」的世界観がそのまま作品のコンセプトに。
ここには古いものと新しいもの、見えない世界と見える世界が交わっている。
自然から生まれ、自然と対立する世界を作り上げた人間。
深い森の精霊で、生き死にを左右する雪女は、本来人間とは交わらないもの。
ところが自分が助けた猟師との異種婚姻によって、徐々に葛藤が生まてゆく。
やがて雪女は幽玄の森へと帰って行き、彼女と猟師の間に生まれた娘が、溶け合う二つの世界を象徴する。
惜しむらくは、予算的な問題なのだろうが、前半後半の間の14年間が映像的に表現されていないこと。
雪女はそのままでいいが、他の役は老けてないと。
しかし毎回意表をつく作品にトライする、監督・主演の杉野希妃は本当に大した逸材だ。
特にこの役は、相当な自信がなけりゃ演じられないよ。