相手によって名前を変え複数の自分を偽って生きる中年男と、突如現れた秘密を知る少女の、奇妙な生活と切ない真相を描いたヒューマンドラマ映画。
ドンデン返し界の天才・道尾秀介原作ということで、ストーリーの面白さは織り込み済み。
前半は中年男視点で描かれ、男が偽名を使う理由も分からず、抱えた過去も明かされず、ハテナだらけの所に少女が現れて更に「え、なんで偽名生活がバレてるの?」とハテナに包まれます。
これがですね、後半の少女視点で一気に明らかになっていきまして、なんとなく流し見していたシーンにまで裏側があったことがわかります。
この辺りは個人的にも「自分の本当のお父さんってどんな人なんだろう?」という時期があったので、かなり自分と重ねて見てしまいました。
謎の種明かしをして、普通はそこで映画が終わるわけですが、そこからもう一捻りあるのが最高でした。
本当の自分を認めたくなくて他人を演じ続ける男と、
本当の自分が分からないから他人を演じられない少女が出会い、
希望の見えるエンディングに綺麗に繋がっていく、
「なんかいい映画見たな」と思える映画でした。
最後はディズニー並みの大ハッピーエンドにしてくれよと思いましたが。
あの女の子いいよね、超絶美人ってわけじゃないのに、なんか見てる間にどんどん好きになるわ。笑顔のシーンが多いからかな。
津田寛治が株を爆上げする映画でもあります。声がいいよね、あの明るい飄々とした声で、やつれていく演技をさせたら日本一よね。
「人間ってのは何十何百面体のサイコロなんだ。見えてる面だけが全てじゃない」というセリフが印象に残りますが、
誰しも会社でのキャラ、友達といるときのキャラ、家でのキャラは使い分けてるところはあるわけで、
それのかなり極端なバージョンが主人公2人です。
なので見ている側にも、共感できたり人間関係を一歩踏み出すきっかけになりやすい、影響力のある内容ですので是非ご覧ください。
僕だけかも知れへんけど、
途中から
「これさ、女の子が幽霊ってオチじゃない?それやったらメッチャ白けるんやけど」
という疑念が頭から離れずに、
最後の真相シーンまでひたすら
「幽霊オチだけは!幽霊オチだけは勘弁してくれ!」
という気持ちでいっぱいでした。
ほんで主人公2人の周りの人間が、全員好きになれないんよね。
全員嫌いやわ、ええ奴1人も出てこんくない?
演劇部の部長がね、メチャクチャ腹立つねん!なんやねんアイツ!なんであんなに机叩くねんアイツ!
でもその人の一面だけで判断せずに、別の面を引き出したいという意味では、あの部長が一番映画のテーマを理解してたんか、、、くそ!流石部長!